*
「…ありがとう」
「良いって、これくらい」
あれから、カンセルはナマエをフロアに据え置かれているソファに座らせ、自分も隣で支えるように座った。
ナマエはカンセルの片口に額を当ててもたれかかっていた。
もう身体から力が抜けきってしまったかのように、ナマエの身体はピクリとも動きはしなかった。
「お前は、強いな…」
カンセルは小さく呟き、ナマエの髪の毛を優しく梳いてやる。
「?」
「俺だったら、狂っちまうよ…自分にこんな事が起きたら」
お前は涙さえ流さずに、この状況に耐えているのにな
カンセルはナマエの頭に置いた手に少し力を込めた。
これはほめられているのだろうか、指摘されているのだろうか…
ナマエは頭の隅でそんなことを考える。
「それは違う…」
「?」
だって、涙をこらえているわけじゃないもの
耐えているわけじゃないもの
「どうしてかな…」
どうしても、
涙が出て来ないんだ
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