*
しかし、彼が無事に任務を終えて帰ってくることはつまり
ホランダーとそれを守る自分の兄を討伐し終えて、ということ
では、この不安はそれに対してのものか
ザックスが兄を討ち取ることへの不安?
…それとは、何か違う気がする。
キュッと写真立てを持つ手のひらに力をこめる。
こうでもしていないと、何かが心から抜け落ちてしまいそうで。
それが何なのかはまだ分からないが、とても大事な何か
そして何より、この孤独な空間が苦しい
いつも隣で笑ってくれる彼がいない。
暖かい、笑顔がない。
「ザックス…」
早く、帰ってきてよ
何に祈るわけでもなく、きつく目を閉じた。
―――ガチャンッ
ふいに聞こえた、荒々しいドアの開閉音。
この家には、ナマエしかいないはずだった。
ナマエはゆっくりと目を開き、音の聞こえた玄関のほうを見る。
ドアの鍵は、閉めていなかった。
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