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廻る星姫 ―スター・プリンセス―
邂逅と別れ
 お母さんたちが亡くなってから、数日後・・・。


ご飯を食べれるようになったし、瞳に光も戻り、笑えるようにもなった。


 そんな晴れたお昼のことだった・・・。


ピンポーン・・・


 インターフォンが鳴らされた。


「はーい!」


彩菜さんが玄関へ小走りで言った。


誰だろう・・・?


不思議に思っていると、


「星奈ちゃ〜ん、少しいらっしゃい!」


彩菜さんに呼ばれた。


 それだけで私はわかってしまった・・・。


流さんが来たのだと、もう別れのときなのだと・・・。


 あぁ、もう少し、もう少しだけ、このぬるま湯につかっていたかったなぁ・・・。


私はのろのろとした足取りで、玄関へ向かった。




 玄関へ行くと、彩菜さんと少しながめの茶髪をゆるく結んだ男性が談笑していた。


あのひとが、流さん・・・?


目元とかお母さんに似てる・・・。


呆然と見ていると、彩菜さんが笑って手招きしていた。


 ハッと意識がもどると、おずおずと二人のそばに行く。


「星奈ちゃん、流さんよ。」


やっぱり、このひとが・・・流さん・・・。


「はじめまして。神無月 星奈です。」


お母さんに言われたことを思い出して、背筋を伸ばし、お辞儀をした。


 そんな私を流さんは、頭からつま先までじろじろと観察するように見た後、感心したように


「姉さんからすごく賢い子だと聞いていたけれど、ここまでとは思わなかったな・・・。


 初めまして、夕凪 流です。


 さっきはじろじろと不躾に見て悪かったね。




 うん、君は姉さんによく似ているね・・・。

 目元は義兄さんかな?

 全体的には姉さん似だね・・・。」


その言葉に思わず泣きそうになった。


 私にもお母さんたちの血が流れているんだと思うと、悲しくて、嬉しかった。


俯いて涙を流すまいとしていた私に流さんは微笑みながら言った。


「今日はもうホテルに戻るよ。

 明日、迎えにくるから・・・。」


私には、それが"ちゃんとさようならしておいで。"と言っている様に聞こえた。


 最後に準備しておいてね、と一言言い残して流さんはホテルに戻っていった。


私は流さんが見えなくなると、くにみつくんのもとに走ってくにみつくんに抱きついた。


「うわあっ!?  星奈? どうしたんだ?」


くにみつくんは驚いたようだったが、私が何も言わず、抱きしめる力をこめただけなのを見て、何も言わずに待っていた。


「あのね、私、明日、アメリカに行かなくちゃいけないんだって・・・。」


「そっか・・・。

 会えなくなっちゃうね・・・。」


その言葉に別れが来てしまうのだと実感した。


「うん、手紙書くからね・・・。」


 しばらくの間、私たちはそうしていた。


 
 その日の夜、手塚家のみんなが私のお別れ会を開いてくれた。


 たくさん笑って、たくさん話して、楽しんだ。




――そして、翌日・・・。


私は、流さんとアメリカへと旅立った。



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あきゅろす。
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