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… 短編集 …
雪すらも溶かして/土方

しんしんと降る雪を見ていたくて座布団と毛布を持って静まり返った縁側に座った。

少しでも身体が暖まるようにと作った生姜湯の湯気も消えて、すっかり冷めてしまったようだ。



“はぁーーーーーっ”



冷たくなった指先に息を吹き掛け暖める。

後少しで日付が変わりクリスマスイヴと呼ばれる日がやって来る。

街中が華やかなイルミネーションで彩られイベントに浮かれた人々で賑わうのだ。



しかしーーー

明日も明後日もクリスマス特別警戒。



真撰組に籍を置く私にはクリスマスを楽しむ余裕なんてありはしない。

それでも、ゆっくりと雪を眺めて僅かでもクリスマスを感じられる今この時間はとても貴重だった。



不意に掛けられた“紫野、”と言う薄暗い廊下の先には着流し姿の副長が毛布にくるまった私を見ていた。



「あ、副長、」

「お前寒ィのに、こんな所で何やってんだ?風邪ひいちまうぞ?」

「雪を見てたんですよ。せっかくのホワイトクリスマスだし、雪は珍しくは無いけど日頃はゆっくり見れないんですもん。」



そう言いながら私は視線を空へと戻した。


はらはらと花びらの様に舞い落ちる白い結晶。



「そうだな、」



同じ様に視線を空へ移した副長から、まさか肯定の言葉が聞けるとは思っていなくて、くすりと笑う。



「テメー…、何笑ってやがんだ?」

「いえっ、なーんにもアリマセーンっ。」

そう答えると“どーせ俺には似合わねぇとか思ってんだろー?”と片眉を吊り上げながら、ずんずん近づいて来る副長が怖い…

「ち、違いますっ!副長ごめ…」

謝るより先に頭から被っていた毛布をひっぺがされ身体が冷気に曝される。

「ぎゃっ!!さ、寒いィっ!!」

あまりの寒さに身体を小さくして言うと取り上げた毛を纏った副長の両腕に抱え込まれた。



「身体冷たくなってんじゃねぇか、」



背中から伝わる副長の体温に



耳元で聞こえたる低い声に



心臓が飛び跳ねる



「…ふ、副長は…あったかいです…ね、」



「あ?風呂入って来たとこだからな、」



ドキドキし過ぎて、それ以上は何を話していいかわからず、二人して無言のまま雪をじっと見つめていた。



「明日も早ェんだし、本当に風邪引ィちまわねーうちに寝ろよ?」



ドキドキし過ぎて何も答えれずにいると、するりと毛布だけを残して離れ行った副長の体温



「あっ!!」



もっと一緒に居たいと呼び止めようと振り返り着流しのすそを掴むと、一瞬驚いた様だった副長



「ふ、副長っ、メリークリスマスっ、」



でも、そんな事とても言えなくて、とっさに思い付いた言葉。



「あぁ、メリークリスマス…」



“紫野、”



小さく呼ばれた名前と同時にしゃがんだ副長から伝わる唇の熱…



“クリスマスプレゼント、貰っとく、”



その熱が急激に体温を上げて行く。



「…おやすみ、」



「…おやすみ、な、さい…」



その熱は降る雪すらも全て溶かしてしまいそうだ。





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