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玉露とパステル・2
「だからって不味そうに飲んでんなよ」
「・・・不味いんだよ」
不服そうに言うと、太陽の男は雨竜から紙パックを取り上げる。
え?と雨竜が戸惑いを覚えるよりも早く、玉露を一口含んだ。ごくん、とわざとらしい喉の音がした。
「美味いじゃんか」
「・・・え、ああ?」
眉間に深い皺を寄せて、太陽の男は意外そうな顔で、紙パックの玉露を褒めた。
「もう一口な」
雨竜の了承を得ずに、さらに一口含む。
目の前の光景が、まるで高速で繰り広げられているように感じる。
この男の真意が分からず、雨竜は苛立ちはじめた。
「黒崎、きみ・・・ッ!」
しかし、雨竜の次の言葉は出なかった。
身体を強めに固定され、不意打ちのように口を塞がれた。
「ぅん・・・」
続いて流れ込んできたのは唇の温度よりもはるかに低い玉露だった。
触れあう舌を伝い、喉の奥へと落ちていく玉露は、しかし、途中で雨竜の唇から僅かに零れた。
喉奥の玉露と、顎を伝う雫と、熱い舌の感触を同時に感じて、雨竜は体のバランスを崩す。
踊り場の土壁に背をぶつけると、短い拘束の時は終わった。
「な・・・黒崎ッ」
口元を拭い、目の前の男を睨む。
「不味くなかったろ?あんまり食べ物を粗末にするなよ」
ひらひらと片手をかざして、太陽の男は踊り場から消えた。
時間にして30秒にも満たなかった。
だが、雨竜の呼吸は僅かに乱れた。
「な・・・んだ、今の」
予鈴のチャイムが控えめに鳴り始めた。
雨竜の耳には雨の音が混じる。
「味・・・なんて、分かるわけないだろう」
けれど、口腔内に残る玉露の香りは、先ほどよりは甘く感じられた。
雨竜は校庭の紫陽花を見た。
霞んで見えた薄紫は、パステルカラーに変わっていた。






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エリィさんありがとう!!もう、海向こうに足を向けて寝られない!!まさか、書いてくれるとは思っていなかったよ〜〜。私が玉露になりたい(違)。エリィさんの文章が、とくに心理描写が大好きでたまらないんですよ!!ってここで告白してどうしますかっ。

あぁ、この一護さん格好良過ぎです。雨竜さんが可愛くて仕方が無いですvv

本当にありがとう、エリィさん!!

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あきゅろす。
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