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玉露とパステル(エリィさまから)
ストローで吸い上げて直接舌に乗せる玉露は、正直あんまりおいしくない。
玉露とは本来、まっすぐ上に伸びるような凛としたイメージの香りと、やわらかな甘みが特徴の由緒正しい日本茶ではなかったか。
紙パックに閉じ込められ、無機質なプラスチックストローで味わうような、そんな茶を飲みたかったのだろうかと、ほんの数分前に自販機の前にいた自分に問いたい気分だった。
「つまり、気分が最悪ってことか・・・」
外階段の踊り場で、雨に打たれる薄紫の紫陽花を見ながら、雨竜はそんなことを思った。
校庭の隅に植えられた紫陽花も、手に握る玉露も、静かに振り続ける雨のせいで価値が霞んでいるように感じる。
それは雨竜のメンタルの微少な揺れと、何でもないただの八つ当たりでしかないというのに。
「何だ、飯食わねーのかよ」
背後から声がして、雨竜は振り返る。
声がする前から気配を感じてはいたけれど、そうするほうが動きとして自然だったから、そうした。
「こう雨が続くと、食欲だって萎えるね」
降雨のせいで薄暗くなっている踊り場に、不釣合いな太陽の髪色をした人物が現れる。こんな気分のときに見たくない色だった。


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あきゅろす。
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