[紅い月] + 不思議な夢だった。 夢のなかの俺はとにかく泣いていて… 悔やんでいて… 目の前の男を一生懸命抱き締めていて。 いったいなんだっていうんだ? しかも、あれは絶対平安時代とかその辺だよな… なによりあの異常に赤い月が気持ち悪かった。 あんな月、俺は見たことねーぞ。 なんだか、俺は恐くなってブルッと体を震わす。 「どーした?」 「いや…なんか昨日変な夢見てさ…今思い出した」 「夢?怖い夢?」 「まぁ…うん」 「へー…つうかさ、今日転校生くるらしいぜ!!!」 「ふーん」 「興味ねぇの!!??」 「ない」 「春ちゃんは冷たい子でちゅねー」 「うっせぇぞ」 「「笑」」 俺はなんだかいつも通りの悠斗にホッとして、今日もいつも通り教室へ迎う。 これから起こるであろう、運命という名の出来事に自分が巻き込まれるなんて、一つも考えていなくて、俺はただこの時を楽しんでいた。 「やっときみに会える…涙がでそうだよ…」 ある男がそうつぶやいてるとも知らずに。 [←][→] [戻る] |