[紅い月]
予感
「春?どおした?」
「…え?」
「もう昼だぞ?」
うそ…
周りを見渡すと、皆がそれぞれ歩きだしたのがわかる。
「今日も弁当だろ?行かないのか?」
「いや…いっいく」
俺なにボーッとしてー…
もう昼かよ。
あれから、奴をあちこち案内したが、その間奴はなにも言わなかった。
ただ、表情だけはずっとおなじ。
そんな優しい目でみるな。
なぜ、そう思うのかは、わからない。
ただ、何も言わない彼の瞳の奥にある熱のようなものが、俺はひどく怖く恐ろしかった。
でも、何なんだよ。
『離れはしない』
といった時。
怖いのに嬉しくて涙が出そうだった。
「春?本当にどおした?変だぞ?」
「…あぁ。」
覗き込む悠斗の顔に安心する。
俺は、教室を見渡し、奴を探した。
…。
目が合う。
『春。』
「…行こう…悠斗」
クラスの皆にかこまれている朝岡総一。
俺には、奴の声がたしかにきこえたが、俺はもう一度振り向きはしなかった。
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