紅×翠 嘘 ずっと前から知ってたよ。 僕は知ってて知らないふりをしてたんだ。 「………紅…ごめ…ん」 はじめからわかってたことだった。 翠が僕を利用してるってことは。 本当は僕と同じような意味で好きなんじゃない。 僕への小さな独占欲と。 自分の存在理由にしたかっただけなんだってことは、 最初から知ってたんだ。 でもね。 それでもいいんだ。 翠がずっと僕の方を見てくれるならなんだっていい。 だから、僕は言わないんだ。 ずるいのは僕。 「なんで謝るんだ?おかしいぞ?翠」 僕は今日も罪を犯したベッドで小さな肩を震わせて静かに泣く翠の頭を撫でる。 気付かないふりは得意だから。 『大好きな君のそばにいたい』 ただそれだけの為に僕は今日も君に嘘をつく。 君が悩んでいても、それさえも嬉しい僕は、やっぱり君よりも狂っていて。 「……ご…めん…紅」 君は僕。僕は君。 そんな言葉を胸の中で繰り返した。 【つづく】 [*前へ] [戻る] |