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仮)森本陽呂の受難
4.

「あの時だって、俺が呼びに行かなかったら絶対ヤバイことになってたぞっ」

隼人は、まるで俺のおかげだろといわんばかりに得意げな顔をしている。

それもそのはずだ。あの時、獅童という人が助けてくれたことを、隼人は知らない。余計な事を話して、いらぬ心配をかけたくなかったのだ。

それに、あれは、助けるというよりも、みっともないから止めろ的な感じだった。あちらにも、俺を助けたつもりなどないだろう。

「あれは絶対おまえに気があったね。すんげー顔近かったし」

それはオマエだろ、とは突っこめず、黙って聞き流す。

「マジで、気をつけろよっ。あの人たち、すげー悪い噂あるじゃん。ほら、一年の時にさ、女の先生が突然辞めたろ? それ、あいつらに輪姦されたからだって噂だぜ」

確かに、俺達が入学してすぐに辞めた先生がいた。

まだ若く可愛らしい感じの人で、男子校では数少ない貴重な女の先生だったし、本当にいきなりの退職だったから、皆あることないこと噂していた。

だが、いくらなんでもそれは話しを盛りすぎだ。

俺たちの通う私立高校は、確かに評判はよくない。頭が悪くても、金さえあれば入れると言われているぐらいの学校だ。俺たちのように普通の生徒のほうが圧倒的に多いが、各学年に一割ぐらいは素行不良の生徒が存在している。

だが今まで、退学者が出たり警察が介入するほどの問題が起きたことなどなかったはずだ。教師を強姦したのが事実なら、噂話に疎い俺だって知らないはずがないのだから。

「そんなヤバい事やって、なんで捕まらないんだよ? それにそんなコトしたら、とっくに退学になってたりするんじゃねーの?」

当然の疑問に、隼人はしたり顔で頷く。

「それなっ。あいつらの親が結構な権力者らしくて、警察沙汰になるようなヤバいことは全部揉み消してるんだと。まっ、寄付の額もすげーらしいから、学校側も甘いというか黙認してるところもあるんじゃねーの?」

俺より圧倒的に交遊範囲が広い隼人は、よくこういった話を俺にしてくる。どこまで本当かはわからないが、寄付の部分は、他からも耳にしたことがあった。

この学校は、確かに金持ちが多い。親が政、治家や大企業のお偉いさんだったりすると、その他の生徒と区別され、優遇されているところがあるのは事実だった。





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