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黒の誓い
 15※



「けほっ」


咳き込んだ瞬間、ヘリオスは「しまった!」と思った。誤魔化そうとする間もなく案の定ひょいっと担ぎ上げられる。

「大丈夫だから」

「いや。だからあれほど今日は寒いと言ったんだ」

担ぎ上げたのはヘリオスの護衛官のシトラス・ガーノルディである。
十年ぶりに近衛の制服を着たシトラスはブランクを感じさせない働きぶりだったがいかんせん過保護だった。

「お願いだから外出させて」

「せっかく治療がうまくいっているのに風邪なんかひいたらどうする。おとなしく寝ていてくれ」

「うぅ………」

優しくベッドに下ろされ布団を掛けられるとヘリオスは抵抗するのをやめた。
困ったように眉を下げた表情をされるのが苦手なのだ。

「陛下もいらっしゃるのに風邪なんかひいてられないだろう?」

「兄上が?」

「先ほど近衛から通達があった。だから、ゆっくり養生しなければ」

黒い手袋をしていない指がヘリオスの頬を撫でる。その厚い皮の感触が好きだった。

「わかった。寝ておくからシトラス、そばにいてくれないかい?」

「もちろん…」

シトラスは笑うとベッドにあがった。
3mはあろうかというシトラスがギリギリ足を伸ばして寝れるベッドはヘリオスの体温ではすぐに暖まらない。まだ冷たいシーツに眉をしかめ、シトラスはもぞもぞと足を動かした。

その大きな体に抱き寄せられたくましい腕にすっぽり収まったヘリオスは安心したように息をはいた。

「そういえばシトラス。君、闘技場制覇していたんだね」

「え?…あぁ、まぁ」

「凄いじゃないか。歴代も凄い戦士ばかりだし何でいってくれなかったの?」

「いや、制覇したと言っても陛下や大将軍閣下には遠く及ばないし……」

「私は嬉しかった。シトラスが歴代覇者のひとりだと知って、とても誇らしかったのだけれど迷惑かな」

「ヘリオスが喜んでくれて迷惑なわけがない。ただ、覇者とはいえ大将軍閣下たちには及ばないから、言わなかっただけだ」

闘技場の制覇は、一流の戦士であっても難しい。よって歴代覇者は永久に名前を刻まれる。
バスティアンやゲオルトの名前も刻まれた石碑にシトラスも名前を残していた。
だからこそ、ヴァルディスもヘリオスの護衛を任せたのかもしれなかった。

「シトラス。君に最高の武器をつくってあげる」

「え?」

「君にふさわしい、最高の武器を」

ヘリオスは微笑んだ。

「それくらいしか、してあげられないから」

「そんなことないヘリオス」

「受け取って。いつでも君を守ってくれるよう、願いを籠めて作るから」

シトラスの胸に手をあて、ヘリオスはささやいた。
戦士であるシトラスにふさわしい贈り物なんて武器くらいしか思い付かなかったし今のシトラスの武器はぼろぼろだった。

「…わかった」

「うん」

ヘリオスが頷くとシトラスはその髪を撫でた。柔らかい黒髪は女のようだったが賢明にも口には出さなかった。




■■■■





やけにスッキリした顔のハレスにアポロンを返したバスティアンはディシスに同情したが何も言わなかった。
ハレスに我慢させると浮気しないとも限らない。性欲の強い種族だから、3日と空けずセックスしなければ満たされないのだ。
クリフと付き合う前のバスティアンも淡白とはいえ一週間に一回は娼婦を買っていた。
ヴァルディスはめっきりセックスしなかったがそれはハレスのせいで女嫌いになったのと娘を寵愛を得させて近づこうとする貴族を無くすためだった。

「それでは〜」

「…何時間したんだ?」

「たったの12時間です」

「…」

ルンルンと帰っていく親友を見送り、バスティアンはため息をついた。いくらなんでもヤりすぎだと思わないでもなかったがあのハレスだ。仕方ない。

『ガルッ』

「クリフ」

『帰ったか』

「ああ」

甘えるようにすりよる巨体に笑みを浮かべ、バスティアンは頷いた。
従えながら奥の棟に向かう。
意味ありげに色を孕んだ眼差しに気づき、バスティアンは一気に体が疼くのを感じた。
最近はクリフにいやらしく見つめられるだけで軽く勃ちかけてしまう。
そんな卑猥な自分を恥じながらもクリフに慣らされ調教された体は言うことを聞いてくれなかった。

「っ。やめ、」

『どうした。いやらしい匂いをさせて』

「見るなっ」

『今のお前は俺のもののはずだぞ。抗うつもりか?』

クリフは寝室までバスティアンを押しながら意地悪く言った。
寝室につくと、すでに2人の力関係は逆転しクリフはバスティアンの征服者となっていた。

『脱げ』

「…」

バスティアンは黙々と脱いだ。赤い顔にクリフは満足げに唸る。
徐々にあらわになる、歴戦の戦士の肉体。細い鋼のようなヴァルディスと厚い筋肉のゲオルトの中間の肉体は無駄な筋肉が一切なかった。
熟れた色の乳首を頂きに持つ胸、凹凸のはっきりわかる腹筋、黒い下生えに軽く熱を孕んだ立派なもの。
なだらかな腰と揉まれて柔らかくなった尻にクリフは食らいつきたくなるのを抑え、命じた。

『あれを嵌めろ』

「!それは嫌だクリフ…っ」

『また尻を叩かれたいか』

「くっ」

クリフの雌となったバスティアンは唇を噛み締めてサイドテーブルの一番上の引き出しを開けた。
そこの小箱に納められたトパーズの小さな環を取り出して躊躇する。数秒のためらいの後クリフの眼差しを受けて意を決したように環の金具をねじった。ツマミをねじると環が開き、乳首を挟み込んで固定できるこの装飾品はクリフからのありがたくない貢ぎ物である。

バスティアンはしこる乳首をはさみ、リングを取り付けた。
じんじんとした痛みとくびりだされて敏感になった乳頭にバスティアンは恥じ入った。風にすら疼く乳頭が赤く充血し自分で見ても卑猥だった。

『可愛くなった』

「酷いぞクリフ」

『どこがだ淫乱』

クリフはしれっと人型を取った。
悔しがるバスティアンの首に首輪を嵌め、クリフの名前が彫られたタグを取り付ける。
まるでメス犬だと揶揄しながらひざまずかせ、奉仕させた。まだ軽く勃起しただけの雄に舌を這わせ、竿をなめあげるバスティアンは本当に雌のようだった。

ペロペロと嘗め、くわえこんで吸い上げる。この行為が好きなバスティアンは次第に夢中で奉仕し始めていた。

「美味そうにしゃぶる。みだらな男だ」

クリフも嬉しそうにバスティアンを撫でた。
わざとバスティアンの口から抜き去り、待てと命じて目の前で揺らす。
物欲しそうに伸ばされた舌を掴んで頬にぺニスを擦り付けると懇願するように見上げてきた。

「今日はもういい」

残念そうに目を伏せたバスティアンをベッドに放り投げる。こんなときでも無意識に受け身を取ったバスティアンに内心感心した。

「んっ」

「今夜はすみずみまで俺が愛してやりたい」

「んむっ」

かぷ、と舌をかまれ、バスティアンは頷いた。
チロチロと舌をなぶられながらクリクリと乳首をリングごと捏ね回されたら堪らない。
筋肉までもみこむように愛撫されてしまうと勃起が揺れた。

「んぁっ、あぁ、」

「乳首しかいじってないのにブッ飛ぶか?」

「ら、らってクリフに触られてんだからっあぁっ、じんじんするっ」

がぶ、と噛みつかれる痛みすらも気持ちいい。
喰われるという表現がぴったりなほど獰猛に求められたい。

「もっと…っ」

「くくっ、貪婪な雌だ」

白い腕に絡まる褐色の手。
突き出された胸に噛みつくクリフの犬歯が肌に食い込んで興奮を誘った。
れろ、と乳首を舐める肉厚の舌の赤さが余計にいやらしかった。
リングを揺らすように食み、つつく。いつもより敏感な乳首からダイレクトに下半身に快楽が伝わり、バスティアンは啼いた。

「あ、ぁあっ、クリフっ、クリフ」

「なんだ」

「今日は、…あっ、じ、らしちゃ、やだっ」

シーツを掴み、潤んだ目でそんな風に言われてしまったら、抗えない。
焦らしてやるつもりだったが昼間の愛しい発言に免じてわがままを聞いてやることにした。

白い足を担ぎ上げ、ひくひくしながらクリフを待ちわびる秘孔を撫でる。子守りの礼に内密にハレスに貰った「激濡れ!ローション」を垂らすと冷たいのかビクッと震えた。

「もうひくついてる」

「んっ」

ぐちゅ、と指を埋め込むと食いついてきた。
ローゼンの酒屋で黒竜の孔は病み付きになると噂していたオスどもがいたが、成る程確かに、性器でしかない黒竜の孔はそこいらの雌なんかよりずっといいと思う。
特にバスティアンなんか名器だと嫁バカになりながらほぐしていたら夢中になっていたらしく、気づけばバスティアンは白濁を垂らしてブッ飛んでいた。

柔らかく熱い肉襞に自身を埋め込むといななくバスティアン。
耳慣れない竜のそれだが、どことなく艶を帯びていて色気がありクリフは気に入っていた。

「起きろ」

「ヒィッアッァッ」

たまには正常位で犯す。犯され喘ぐバスティアンの顔が見れてなかなか乙なものである。

「ーーーっ、こわ、れるっ」

「淫乱が、嘘をつくな」

ぐちゅぐちゅ、ぐちっ
クリフが腰を回すたびにローションで濡れた肉襞が恥ずかしい音を立てた。
狭い道を無理矢理拓き、肉襞をこそぐぺニス。律動に体がずれれば引き戻され、快楽に叩き込まれる。

ビリビリとした快楽は頭を直接掻き回すようで視界が霞んだ。

しかも、クリフは一度では終わらない。

強靭な肉体のぶつかり合いを制し、魔界の大将軍を組み敷く優越感と征服欲はクリフを何度でも昂らせるのだ。

「鳴け。もっと。足りない、バスティアン、抱き潰すまで、治まらんぞ」

黒髪をかきあげ、ニヤリ、と笑った雄くさいクリフに思わずバスティアンは締め付けてしまった。
ますますニヤリとしたクリフは律動を早め、前立腺を何度もえぐり叩く。

そしてバスティアンの最後の理性はそこで途切れ、その後は思い出すのも恥ずかしいほどの痴態を演じた。





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