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黒の誓い
 13※


「んっ、ああっ」

少し高くなった甘い声が響く。
ハレスは耳触りのいいそれを楽しみながら腰を打ちつけた。ディシスの白い肢体が面白いほど跳ね、ハレスを締め付ける。
狼のときのほうが感じやすい気がしたが、それでも充分よく感じてくれている。

「はれ・・すっ」

「はい、ディシスさん」

「きょ、うは優しい、な」

汗で張り付いた前髪を払ってやるとディシスは微笑んでそう囁いた。
ハレスは苦笑しながらディシスの額にキスを落とした。

「そうですか?」

「んっ」

そうかもしれない。
いつも、あまりにディシスが可愛くて自重できずに苛めてしまうから。

今も上気した肌や潤んだ目で煽ってくるのだけれど、流石に自分を押し留めている。
ディシスの雄に手を絡め、囁く。

「…感じてください、もっと、私を」

「ぁっ、ハレス…っ」

抱いてくれというディシスの願い。
彼のことを本当に考えるなら、それは無理な話だったと思う。
ディシスの消耗は凄まじかった。今も怪我も汚れもそのまま喘いでいる。

本来なら、風呂に入れて手当てさせて寝かせるべきだ。

ハレスは目を細めた。

だが――出来ない。

己のために頑張ったその身体を、そのまま愛してやりたかった。

「激しっ、わふっ」

「まだ序の口ですよ」

リズミカルに腰を動かして突き上げながら胸への愛撫を細やかに施す。
尖りきった乳首は赤く色づき、甘く噛むとディシスは声を上げた。
嬌声は艶めいていて雌のように媚を無意識に含んでいる。

ディシスの臀部へ手を滑らせ、結合部に触れた。

「んやっああっ」

「皺もなく伸びて私を受け入れてくれていますよ」

「言わなっ、言うなっ」

「もっと感じて…」

羞恥と、それによる快楽に飲まれているディシスの首筋に舌を這わせながら尻を撫で、尻尾にたどり着く。
力なくしなれているそれを掴むと、ビクッとディシスが震えた。

耳と尻尾はディシスの性感帯である。

「くっ、触るなっ」

「気持ちいいでしょう?」

「んっ」

噛締めたディシスの唇が赤くなってしまう。
それを見たハレスは尻尾から手を離し、ディシスを抱きしめた。

「う?」

「すみません、苛めてしまいましたね」

「−−ッ!」

優しい声音で言われ、ディシスは身体を震わせた。
胎内に食んでいるハレスの雄が脈動し、ぞくりとしたものが背筋を這い上がった。

「でも、もう持ちそうに無いのでいいですか?」

「は…ひゃああっ」

低い声で囁かれハッとしたときにはもうガッチリと腰をつかまれてラストスパートをかけられた。
ガツンガツンと打ち付けられる度にスパークしてしまう。

「ディシス、さんっ」

まだ本調子ではない頭がふらつきそうになるのを抑え、性的な興奮に身を任せる。
ディシスの乱れる姿を見るだけで、こんなに自分が興奮できたのかと思うほど興奮する。
抑えなければ、ぶっ飛びそうなほど。

「はれ、す、も、出ちゃうっ…イっちゃ…」

「思う存分、どうぞ」

「はああっあ」

前立腺を掠めてやれば、あっけなくディシスはイッた。
そしてその強烈な締め付けに持っていかれるようにハレスも果てた。

「…ッ!!」

「はぁはぁ……ハレス?」

荒く息をつくディシスに、ハレスが倒れこむ。
いきなり増した重みにディシスはハテナマークを飛ばしながらハレスを覗き込む。

「…ハレス!?」

ハレスは意識を失っていた。
殆ど死から蘇った彼は目覚めたばかりで体力がまだ戻っていなかった上に契約したままだったディシスに生気を吸われ意識をなくしたのだ。

仰天したディシスはとりあえずハレスの下から這い出て彼を寝かせた。
ベタベタしている身体をどうにかしたかったが、腰が重くて動けなかった。

「…どうしたものか…」

それにディシスも疲れてしまっている。

ディシスは考えた挙句、自分も寝ることに決めた。








□□□□





「…昨夜は申し訳ありませんでした」

朝目覚めると後始末がしてあり、ハレスが神妙な顔でベッドの縁に腰掛けていた。

『もう大丈夫か』

いつの間にか人型も解けていて、ハレスの手になでられる感触が気持ちよかった。

「面目御座いません」

『気にするな。我もあんなときにせがむのではなかった』

「いえ、私の責任が大きいです」

ハレスは気まずそうな顔でディシスをなで続けた。
ベッドに沈む銀色の毛並みはきらきらと輝く。
これが見れなくなっていたかもしれないと思うと今更辛さが込み上げてきた。

『…それよりも』

「はい?」

『契約なのだが…』

「ああ、早くレオニクス様に戻られてください」

『いいのか?』

ハレスがあまりにあっさりと言ったので不審に思いながらディシスは聞いた。
ハレスは微笑み頷いた。

「主従の絆は私が一番わかるつもりですから」

『ハレス…』

「貴方が恋人として私の傍にいてくださることほど、贅沢なことはございません」

『…』

「貴方がどれだけレオニクス様を大切に思っていらっしゃるか分かります。どうぞ、レオニクス様ともう一度契約なさいませ」

ディシスは胸が温かくなるのを感じた。
これほど理解してくれるとは思わなかった。最悪説得しなければならないかとも思ったのに。

『ありがとう』

「いえ、私こそ…助けてくださりありがとうございました」

ディシスはハレスに顔を寄せた。
温かい。

ああ、良かった、と


今やっと実感できた気がした。







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