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小説
契り
それはある金曜日。
部活が終わり、学校の駐輪場。
自転車の鍵を探そうと鞄を漁る黒髪の乙女がいた。
その背後には彼女を狙う長い影。
そんなことに気付かない乙女の手はひたすら鞄とブレザーのポケットを行き来した。

「塚田さん…」
青年は長い腕を彼女の逞しい腰に伸ばした。彼女の乳房に手をあて、人差し指と中指で突起の尖端を挟んだ。

情けない声をあげ、驚きと官能で硬直する少女。びくりと強張った後でゆっくり振り返る。

「…勝間先輩!?」
先輩と呼ばれるその長身の男は齢十八。彼女が所属するクラブの元部長で、元彼女持ちだがチェリーである。
面皰面と無感情な顔。本当はアツいハートを持っているのだが、そんなことに女は気付けない。
美優も処女だが、アクネまみれの顔でプリンセスに恋するとは身分不相応だと思うのだ。

「やだ…止めてください勝間先輩ッ…!」
「嫌よ嫌よも好きのうちって言うから…」
「厭ァ!離してッ!助けて山下先輩!」
「山Pがどうしたの?」
意地悪げにそう言って太股の隙間に左手を滑らせようとした勝間だったが…。

「呼んだ?」
偶然メシアが現れた。小さく舌打ちする勝間。
彼は美優が去年想いを寄せていた山下その人である。
今日も魔女のような女と一緒だ。
魔女は笑いながら言った、「塚田さんと勝ちゃん付き合ってたんだねぇ!」

やはりこの女は魔女であろう。この場は四人で途中まで歩き、勝間の自転車で送ってもらうしか術が見つからなかった。

勝間と美優の家の方向はまるで違った。にも拘らず、一言も文句を溢さずに塚田家へ向かう勝間の大きな背中。
ウエストをガッシリと掴んだ乙女の中に、いつしか飼い犬への慈しみのような勝間への愛情が生まれていた。
風が吹けばもっさりした髪を倍に膨らませ、坂があれば荒々しい呼吸を隠さずに登った。
家に着く頃には、荷台に黄色いタオルを置いた紳士的な飼い犬は美優に後ろから乳頭をまさぐられていた。成程、これが下剋上だ。

美優は自転車の鍵のことをすっかり忘れていた。月曜日彼女が遅刻したのは言うまでもない。


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あきゅろす。
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