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それが恐ろしい魔物の姿なら、俺は叫んで逃げ惑ったに違いない。しかし、それはどう見ても、可憐な女性にしか見えなかった。
長く真っ直ぐな白い髪、気の強そうな細い眼、艶やかな唇、美しさの象徴ともいえよう柔らかそうな耳、長くふさふさしている尻尾…あと、それなりにすらっとした身長。村の女には、こんな綺麗な奴はいない。
「………」
近付いて、着物の裾をばっとめくる。
「お前、女?」
「な、何をする!我は雄だ!」
「あー、残念…そんな可愛い顔して男かよ」
まるで生娘か何かのように、まくり上げた裾を押さえつけた。
そんな様子を見ていたら、怖さなど頭から飛んでった。裾を捲った時に見えた生足が、女のソレより白く美しい。随分ご無沙汰な俺にとって、爆薬のような存在だ。
「男でも構やしねぇや、一発ヤらせろ」
「ぶ、無礼者!我はこの地の神だぞ!さっさと用件を言って帰れ!」
「いやそれは無理だわ。帰ったって、俺にゃあ女はいねぇんだ」
それに、これ程綺麗な女もいねぇしな。
「神様、哀れな俺を救ってくれよ。人助けだと思ってさー!」
「やかましい!男とする趣味はない」
「なあ、これ狐の尻尾?」
「っ!」
なんか見たことある尻尾だな、そういや、狐の神様なんだっけ?、と神様の話は後目にソレを触る。
すると、彼はびくんと身体を震わせて顔を真っ赤にした。
「さ、触るな…!」
「なんで?」
綺麗な人にこんなの付いてたら、それだけでイイだろ。好奇心も手伝って、俺は触るなと言われてもやめなかった。
「やめ、ろと言っているのが、聞こえないか、お前は…っ!」
「神様、顔真っ赤。ココ触られたらどうなんの?」
聞かなくても、大体分かってきた。
以前、友人が、うちの猫は尻尾の付け根辺りが性感帯なのだ、と言っていた。それと似たようなものなのかもしれない。
そう考えが至ると面白くなって、尻尾の付け根辺りをわざと刺激した。
「ねえ、どうなんの」
「ひ…っ、あ、はッ…離し…ッ!」
「答えろよ、そしたら離してやる」
「…っ、童、悪ふざけはよせ…!」
ついでに、さっきからピコピコ動いていた耳も触ってみた。
ますます眼を潤ませて、足で立つ力が抜けてきているのが分かった。
「ん、あ…ッ耳…やめ、あっ、…!」
「おっと」
彼はかくん、と膝が折れて地面にへたり込んだ。
それを好機とばかりに組み敷いてやった。神様っていうわりには、弱いぞ、コイツ。
「…っ、正気か、童…!」
「神様のくせに、まさか、怖いのかよ?」
「そんなわけ…!」
ふん、思った通り神様ってやつは自尊心が高いみたいだ。強気に出ると踏んでの言葉だったが、案の定うまくいった。
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