2 それが恐ろしい魔物の姿なら、俺は叫んで逃げ惑ったに違いない。しかし、それはどう見ても、可憐な女性にしか見えなかった。 長く真っ直ぐな白い髪、気の強そうな細い眼、艶やかな唇、美しさの象徴ともいえよう柔らかそうな耳、長くふさふさしている尻尾…あと、それなりにすらっとした身長。村の女には、こんな綺麗な奴はいない。 「………」 近付いて、着物の裾をばっとめくる。 「お前、女?」 「な、何をする!我は雄だ!」 「あー、残念…そんな可愛い顔して男かよ」 まるで生娘か何かのように、まくり上げた裾を押さえつけた。 そんな様子を見ていたら、怖さなど頭から飛んでった。裾を捲った時に見えた生足が、女のソレより白く美しい。随分ご無沙汰な俺にとって、爆薬のような存在だ。 「男でも構やしねぇや、一発ヤらせろ」 「ぶ、無礼者!我はこの地の神だぞ!さっさと用件を言って帰れ!」 「いやそれは無理だわ。帰ったって、俺にゃあ女はいねぇんだ」 それに、これ程綺麗な女もいねぇしな。 「神様、哀れな俺を救ってくれよ。人助けだと思ってさー!」 「やかましい!男とする趣味はない」 「なあ、これ狐の尻尾?」 「っ!」 なんか見たことある尻尾だな、そういや、狐の神様なんだっけ?、と神様の話は後目にソレを触る。 すると、彼はびくんと身体を震わせて顔を真っ赤にした。 「さ、触るな…!」 「なんで?」 綺麗な人にこんなの付いてたら、それだけでイイだろ。好奇心も手伝って、俺は触るなと言われてもやめなかった。 「やめ、ろと言っているのが、聞こえないか、お前は…っ!」 「神様、顔真っ赤。ココ触られたらどうなんの?」 聞かなくても、大体分かってきた。 以前、友人が、うちの猫は尻尾の付け根辺りが性感帯なのだ、と言っていた。それと似たようなものなのかもしれない。 そう考えが至ると面白くなって、尻尾の付け根辺りをわざと刺激した。 「ねえ、どうなんの」 「ひ…っ、あ、はッ…離し…ッ!」 「答えろよ、そしたら離してやる」 「…っ、童、悪ふざけはよせ…!」 ついでに、さっきからピコピコ動いていた耳も触ってみた。 ますます眼を潤ませて、足で立つ力が抜けてきているのが分かった。 「ん、あ…ッ耳…やめ、あっ、…!」 「おっと」 彼はかくん、と膝が折れて地面にへたり込んだ。 それを好機とばかりに組み敷いてやった。神様っていうわりには、弱いぞ、コイツ。 「…っ、正気か、童…!」 「神様のくせに、まさか、怖いのかよ?」 「そんなわけ…!」 ふん、思った通り神様ってやつは自尊心が高いみたいだ。強気に出ると踏んでの言葉だったが、案の定うまくいった。 [*前へ][次へ#] |