[携帯モード] [URL送信]
愚かなのは周知事項です(もう止まらないんです)

今日もたくさん嫌なことがあった。なんのために生きているのか本当にわからなくなってくる。帰ったってどうせ居場所もないし、でも学校ももうすぐ閉まっちゃうし、予備校にでも行こうかな。少し外にいられる時間が増えるだけだけれど、それでも家に帰るよりはマシだよね。

「あれ、まだいたの」
「もう帰ります」

戸締まりに来た担任にペコリと頭を下げて鞄を肩にかけて教室を出ようとしたら、強い力で手首を掴まれてすこし驚いた。ベル先生は見た目はなよなよだけど、意外と力はある。いまはあまり人と話したい気分じゃないんだけど。特にベル先生とかね。

「なんですか」
「ちゃんと寝てんの?」
「え、あぁ」

最近みんなに言われるんだけど、やっぱり顔色悪いのかな。でも教師なんて生物に心配されるのは私のプライド的にどうしても許せないから、笑顔を作って大丈夫ですよと言おうとしたのに先生はしししと笑った。

「ま、作り笑顔出来る程度なら平気か?」
「…」
「相変わらず可愛くねーの」
「うるさいなぁ、もう帰るんだから」
「ほんとに帰んの?」

先生はぐさりぐさりと痛いところを笑顔で突いてくる。こういうところが昔から苦手なのに、結局高校3年間はベル先生がずーっと担任だった。だから呼び出しとか絶対されたくなくて、なんでもそつなくこなしてたのに、気まぐれに私の前に現れてなんなのよ。

「先生には関係ないでしょ」
「あるって言ったら?」
「プライバシーのしんがーい」
「ししし、小学生みたいなこと言ってんなよ」

いらっとして、横目で睨んだのに、先生には所詮小娘が怒ってるくらいにしか思われていないらしい。手招きをされたから、シカトして今度こそ教室を出ようとすると後ろから抱きしめられた。ほんとコイツって、教師失格すぎる。

「もう辞職すれば?」
「ほんとお前って冷たいよねー俺ケッコー生徒に人気あんだけど?」
「そういうとこも嫌いなの」

なんでなんで、私以外の女の子と先生が話してるところを見なきゃなんないのよ。腹立つでしょ?私の気も知らないで気安く話しかけてこないでよ、私とあの子たちは違うんだから。口になんて絶対出してやらないけどね、ベル先生なんてこれっぽっちも好きじゃないし。

「俺は好きだけどね」
「立場分かってる?あんまり若い子にちょっかい出すとそのうちほんとに誰かに」
「俺がお前以外に手出してないの知ってるくせに」

ベル先生に言葉を遮られる。その声に少し怒りが混じっているような気がして、不安になった。でも私は悪くない、どこの世界に現在進行形で生徒に手を出している教師の発言を尊く信じる奴がいるんだ。クラスで一番マジメな女子くらいだよ、そんなの。怯まずに腕から抜け出そうと身をよじってみたけれど、よりいっそう強い力で拘束されるだけだった。

「俺の家来いよ。場所分かんだろ?」
「…」
「鍵1コしかないから、お前来ないと俺家入れねーから絶対来いよ。うししっ」
「ちょっ…!」

ブレザーの右ポケットが僅かに重くなった感覚に抗議しようとしたら、ベル先生にぱっと離されて拍子抜けした。怒ろうと口を開いて振り向けば、後ろでドアが開く音。また首の向きを戻すとそこには警備員さんが立っていた。

「もう完全下校時間ですよー」
「すいません、コイツ寝てたもんで。ししし」
「……」

なにが、寝てただ。私に抗議する間も与えずベル先生はするりとドアを抜けて去ってしまった。あんなヤツ、そのまま野宿すればいいと思う。でも、それであいつが風邪でも引いて明日休まれて、授業が遅れたら受験生としてクラスのみんなが迷惑してしまうだろうから、仕方ないから鍵だけ届けに行ってやる。でももちろんもう家には上がらない、昔みたいな失態を晒してたまるか、あんな奴とキスしたなんてほんとうに思い出したくないんだから!私が大人になったとこ、見せてやる。ほんとうにそれだけなんだからね!




(つづく・・?)


(101207)



title from Largo



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!