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ラブラドール(美大生×非常勤講師)
オハヨウ。オヤスミ。マタアシタ。スキ。キライ。アイシテル。
言葉ではとても足りない、手と手で触れあってもまだ足りない。
■ラブラドール
火曜日はいつも、4限の講義が終わったら一緒に帰る。
そして沖田先生か俺かどっちかの家に行って、飯食ったりテレビ観たり、じゃれあって、そのまま愛し合っちゃったり。
尤も、火曜日じゃなくてもそういうことするけど。(昨日だってウチに泊まりに来たし。)
今、ちょうど4限のリトグラフ演習が終わって先生は帰り支度をしているところ。
別に邪魔をしたいわけじゃないけれど何となく、触りたい、と思ったり。
「何、」
後ろから抱きついて、肩に顔を沈めて息を吸いこむと、先生の匂いが俺ん家のシャンプーの匂いに紛れて薫った。
「総悟」
「土方くん、仮にもここ、大学ですぜ」
「知ってる」
ぐいと半ば強引に顔をこちらに向かせて唇を寄せれば、そこは素直に応じる。
「…首痛い」
「じゃこっち向いて」
総悟の体を反転させて、キスを再開。
唇を割って、お互いの舌を押し付けあったり、下唇に噛みついたり。
はぁ、と呆れたような溜め息にも少し色が混じって、ドキリとする。
好き。愛してる。
口をくっつけたまま、吐息のようにそれはこぼれた。
「…サムッ!」
「お前なあ、ここは空気読んで真っ赤になって『俺も…』とか言えよ」
「アンタ、今自分でめちゃくちゃ気持ち悪いこと言ってるの気付いて、んぅ、」
言葉を遮って、ガツガツと表現した方が適切かも、それくらい総悟の口腔を貪った。
「総悟、返事は?」
額と額、鼻と鼻が静かにぶつかって。目と目が合って、少し照れる。
「…だいたい俺ァ愛してるって言葉は、漠然としすぎてイヤでさぁ」
唇を解放して、頬や目尻にキスをしていると、総悟がポツリと呟いた。
言葉の意味を嚥下できずにぽかんとしていると、総悟はするり、俺の腕から逃れて、帰りやしょう、とカバンを投げて寄越す。
でも愛されんのは嫌な気分じゃねぇから、いっぱい愛しちゃっていいですぜ。なーんて。
扉を開けながら、総悟は振り返り笑った。
「今日もいっぱい愛してやるよ、布団の中でな」
「キモい」
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愛してるって言ってくれなくても
愛してるって言うよ。
あれ、なんか美大設定あんま関係ない…
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