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僕にうつして
「虫歯だって、ダッセェの。」
■僕にうつして
玄関先、靴を履くために座っていた土方に、沖田は声をかけた。
「ニコチンの摂りすぎでさ」
「うっせ」
「男前が台無しだなァー」
「いちいち棒読みなんだよテメェは!」
「いったそー」
彼は土方の横に膝をつくと、腫らした頬を撫でてうっとりと笑んだ。
「俺が弱ってんのがそんなに嬉しいかよ」
「キス、しやせんか」
「は?」
ポカンと口を開けた瞬間、沖田の舌が侵入してきた。
れろ…、と音がしそうなほど、その舌はねっとりと土方の歯列をなぞり、唇を吸った。
「…っ、痛ぇよ」
「土方さんはMだから、痛いのが好きなんでしょ」
そう笑うと、彼は立ち上がって踵を返す。
いってらっしゃーい
間延びした声が、廊下に響いた。
「あァ、今ので俺に虫歯がうつったら、責任取ってくだせぇよ」
(本当はむしろ、こうすることで)
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君に僕をうつしたい
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