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大切をきずくもの
「お誕生日おめでとうございまさぁ…って何してるんですかィ?」
■大切をきずくもの
あまりに単純で、素直な言葉に土方は耳を疑った。
毎年この日は、プレゼントと称していつにも増して壮大な嫌がらせを受けるのが慣例なのだ。
いつ襲撃を受けるかと、内心ヒヤヒヤしていたものだから、障子が開かれた瞬間に身構えてしまった。よって、筆を持ったまま駆け出すような、はたから見れば少し滑稽な態勢でいる。
「よ、よぉ、なんだもう見廻り終わったのか」
何もないと見せかけて、いきなりドカンとやられるかもしれない。
土方の疑念をよそに、総悟はよっこいせ、と土方の隣に腰をおろした。
「俺ァ今日はオフですぜぃ。アンタもモノ好きだなぁ、自分の誕生日に仕事なんざ、マゾの気持ちはわからねぇや」
書きかけの書類を覗き込んで、総悟は呆れたような顔をしてそれから、土方の顔をじぃと見つめた。
「んだよ」
「土方さん…後ろ向いてくだせぇ」
「あぁ゛!?てめーやっぱ何か企んでやがるな!」
「うるせーガタガタ言わずに言う通りにしやがれィ」
「いてっ!」
ぐいと、半ば力任せに土方を後ろ向きにして、総悟はその背に思い切りぶつかった。
「総悟…?」
背中に耳を当てて、腹に腕を回して、ぎゅうと抱きしめる。
目を閉じて、聴覚と嗅覚に神経を集める。
少し速い心臓の音。きつい煙草のにおい。
この人が生きている証拠。
「この心臓が止まるまでそばにいてあげまさぁ」
「…それは、プロポーズ?暗殺予告?」
「さぁねィ」
どっちでも、アンタ嬉しいでしょう?
背中越し、総悟は笑った。
「プロポーズだと思っとく」
「ポジティブですねィ」
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ささやかながら、でも目一杯の、プレゼントです。
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