雨に消えて、/跡部、悲恋?
ガタガタと窓が震える音が聞こえる。
窓を見ると、雨が結構降っているのか、窓は濡れて外の様子がよく見えない。
「…ただいま」
「おかえり、景吾」
どこの女に植えられたのかは知らないけど、景吾の首筋には赤い花が咲いていた。
赤い花……まるで血のように赤い。
抱きついてみると、雨の独特な匂いと知らない香水の匂いが混ざって目眩がした。
─────また女と会っていたのか。
景吾は、そんな私の思いに気付いているハズなのに知らないふりをしている。
きっと、浮気をされても自分を愛し続けるバカな女、そう思って心の中で笑っているのだろう。
「ん…っ」
私を抱きしめるのと同じくらいのタイミングでキスをする。
舌を絡ませ、私を離さないように深く、深い口付け。
景吾の心など、ココにはないことくらい分かっている。
だけど独りにはなりたくないから、景吾にしがみつく。
「…結婚する事になった」
跡部の会社のお得意さんの娘、1年前から付き合っていたのだと言う。
静かにそう言う跡部の顔は、ドコか幸せそうだった。
私、相当バカな女ね…
心の奥では、景吾は最後には私のところへ帰ってくる、なんて自信があった。
でも景吾は最初から、私など愛していなかった。
その場から逃げるように去り外へ出てみると、思った以上に雨は酷く、私の涙を隠してくれた。
雨に消えて、
(この恋よ、さようなら)
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