幻滅デイリー 負け組探偵 黙々と、煎餅を無心で食べる二人。部屋の中では、淡々と流れるテレビのニュースキャスターの声。 「先生、暇ですね」 「あぁ」 バリバリ、と煎餅を噛み砕く音。袋に入ったままの煎餅を叩いて割る音、袋を破く音。それが、何度も繰り返される。 「パーッと、デカい事件でも起こりませんかね」 「起こらないだろうね。例え起こったとしても、ぼくらは呼ばれないだろう」 「もう、浮気調査なんて嫌ですよう」 「でも、君は浮気調査に向いていると思うよ」 「向いていたとしても、嫌なんです」 平和だった。探偵が殺人事件の謎を解くなんて、まるでフィクションの世界。 「君はね、集中力の高さに自信を持つべきだ。実際問題、探偵に必要なのは集中力の高さと持続力だからね。張り込みが物を言うんだよ、本当」 「それ、探偵じゃなくて警察じゃないですか」 「んー、そうだねー」 再び、煎餅にかじりつく二人。どうやら、明日の天気は晴れらしい。 「やっぱりさ、探偵が考える事なんて二の次なんだよ。事件解決の鍵は、物的証拠」 「本職が探偵なのに、そんな事言ってー」 「君は、浮気調査嫌いなの?」 「嫌いですッ!」 「迷い犬や、迷い猫捜しも?」 「嫌いですッ!」 [戻][進] |