幻滅デイリー 試験的劣情 試してみたい事があった。ぼくは、彼を欲求の処理に使ってしまった。性欲処理に使わなかっただけでも良かった、と思い込みたかった。 「君は、ぼくが好きなんだろう。全て、受け止められる器量と度量はあるのか」 ぼくは、「あります」と言わせる為に質問をぶつける。 「それなら、君を抱いてやっても良い」 最低だ、と唾を吐きかけられるのが当然だ。けれど、彼はそれをしなかった。しなかった事で、彼はぼくをじわじわと傷付けていく。計算ずくならば、殺していたかもしれない。 「速く来いよ」 苛々とした強めの口調で呼ぶと、ふらふらと間抜けにも近付いて来る。決して怒鳴らないが、せき立てる様に言葉を紡ぐ。 ──カチッ、カチカチカチ。 「う」 「声を出すな、顔を見せろ」 酷く興奮していた。きっと、脳内麻薬が溢れ出ていただろう。 「ひ、あッ」 「泣くのは、百歩譲って許してやっても良い」 言われなくとも、彼は泣いていた。言われた通りに歯を喰い縛ってなるべく声を出さず、肩を震わせながら目頭からも目尻からも涙を零していた。別に、罪悪感も無い。 「いい子だ」 ぼくは、静かに彼の手首へカッターナイフの刃を沈めていった。 [進] |