幻滅デイリー リーズン・ブルー 彼女は鏡台の前で、静かに髪を梳いていた。やがて、手を休める。 「あなたは……、何で生きているの?」 鏡越しに、彼女は訊く。鏡に映った目は、恐ろしく冷たかった。ぼくは答えられずに、敢えて目を合わせようともせず下を向いた。視界を遮断する事によって、彼女と距離を取る。しかし、彼女は少し悲しそうに言う。 「何で、すぐに答えてくれないの?」 「それは、その……」 しどろもどろと、呂律が回らなくなる。彼女の表情自体は変わらないが、声色は悲しさに溢れ、部屋を暗くする。 「わたしは、あなたの為に生きているのに」 部屋は見えない何者かの手によって、暗い青に塗られていく。ぼくの視界は、青く染まっていく。やがて、空気までが青く変わるのだろう。ぼくは勝手に、そう思った。 「あなたは、わたしの為には生きていないのね。嘘でも良いから、すぐに答えてくれれば良かったのに」 それは、彼女の嘘だ。嘘なら嘘で、「それは、嘘よ」と言及するくせに。ただ、それはぼくの口から出る事が無かったが。しかし、ぼくは一つだけ言いたい。 「ぼくは、君を愛しているぼくの為に生きているんだ。それじゃ、不満なのかい?」 ぼくの掌は、青く染まった。 [戻][進] |