幻滅デイリー 初めての、 「ていッ!」 大きな鍋が無いので、適量のパスタを二つ折りにする。乾麺状態のパスタは、バキッと音を立てて割れた。これなら、三本の矢だろうと軽く折れる事だろう。 「沸いてる沸いてる」 鍋の蓋を開け、気泡を確認してから適量の塩を入れる。 「成程、塩は下味を付けるために入れるのね」 ふむ、と頷いてからパスタを湯に塩を放り込む。 「パスタは、互いがくっ付かない様に素早く混ぜる」 菜箸で、ガツガツと混ぜていく少女。火は適当に、茹でる時間は時と場合によりけり。たまに、味見。 「固ッ、ボキッて!」 あまりにも適当過ぎる料理は、一人の少年を震え上がらせるには十分だった。ビクビクと、出来上がったナポリタンにフォークを伸ばす。 少年は考える。パスタを茹でている際に、幾度か味見をしているのだ。固さだけならば、食べられる筈だ。 「頂きます!」 フォークに巻き付けたナポリタンを、意を決して口に投げる。 「ま……ッ」 「美味いだろう」 有無を言わさぬ、少女の笑顔に目を見開く少年。 「不味いか? 吐き出してみろ、死刑だぞ」 「ま……、マジ美味いです……」 「そうかそうか!」 ※料理は愛情、なわけがない。 [戻][進] |