幻滅デイリー ベタに弱い まぁ、ある程度ヨゴレのポジションに付くと初な事が苦手になるのさ。彼は、軽く言っていた。 「寒い」 くしゅん、と軽くクシャミをする。もう、季節は春なのに。暑さで桜は散ってしまったのに、と通学路のド真ん中で空を見上げた。まさに、本日五月晴れ。 「風邪か?」 「ギャッ!」 上から顔を覗き込まれ、ギョッとする。 「歩いて少しだろ、大学はまだ先だぜ」 「ダルい……」 「帰るか?」 澄ましきった、憎いあン畜生の顔。実は初、だとか何とか言っていた。コイツの場合、絶対嘘だ。 「講義遅れると、ついてけないから行く」 「じゃ、歩け歩け」 「手、引っ張って。も、一歩も歩けん……」 手を伸ばすと、冷たく払われた。 「帰れ。しかも、弱ってても色気ねぇし」 「ていッ!」 暫く歩いた後、隙を窺って手を握る。しかも、指を絡ませるとかいう恋人繋ぎってやつで。 「て、手前ェ! 元気じゃねぇか、離せ!」 「断る、このまま連れてけ!」 「ふざけるな、この!」 指を引き剥がそうとするが、絶対に離さない。それに耳まで真っ赤にして怒るとは、と思わず観察してしまう。すると、諦めた様に彼は呟いた。 「……手とか、繋がれたら惚れちまうだろうが馬鹿……」 [戻] |