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名探偵の助手
ナンクロ求人広告
 これは、伊部莉子と扇城寺有弥が出会うきっかけとなった話──。

 伊部莉子は、求人広告の不思議なスペースを見て首を傾げた。店の名前が無ければ、連絡先も住所も無いのだ。そして、その代わりにナンクロ。当然、首を傾げたくもなるはずである。しかし、所詮は余ったスペースなのだろうと思い直し、暇潰しにペンを握った。

 彼女は学生寮で、隣の部屋から聞こえる電子ピアノの音を聞きながら、十問あるナンクロを一つずつ解いていく。日本芸術大学の楽理科に入学したいが為に、遥々イギリスから日本に帰国子女としてやって来たのだ。

 黙々と順番に解いていくと、十の数字が浮かび上がった。自らの通う大学の電話番号と非常に近い十桁を見た莉子は、ハッとする。やはり、ただのデッドスペースでは無かったのだ。これは、この地区の近辺の電話番号なのだから。彼女は早急に携帯電話を取り出し、十桁をプッシュする。すると、二度目のコールで男性が応答した。
「はい、こちら美容室カノンで御座います」
「び、美容室?!」
驚きに声が裏返ると、彼はクスッと笑う。
「おや、ナンクロを解かれた方でしたか。それでは、お越しをお待ちしております」
穏やかな声とは裏腹に、説明もしないふてぶてしさ。更に、こちらの話も聞かずに電話を切るという暴挙。彼女は思わず、悪態をついた。
「何なのよ、一体」
しかし、腹の虫がおさまらない莉子はインターネットで美容室カノンを検索する。場所を確認すると、大学帰りに寄って一言文句を言ってやると決めた。

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あきゅろす。
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