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それはたとえるなら隠れ家みたいな、2
「で、どうします10代目?もう段取りは考えてらっしゃるんですか?」

「えっ、ああ、いや…まだ具体的には……」

やる気満々の獄寺を連れて、ツナはファーストフード店に入った。
無論、心中という一大プロジェクトについての話し合いのためだ。

獄寺の吐いた煙草のけむりの行く先を目で追うツナの胸には幾らかの後悔があった。
(今更だけど…どうしよう…いや、確かに獄寺くんにこの件を持ちかけたのは俺なんだよな…)

「もし宜しければ俺の希望とか、聞いて頂いてもいいですか?」
少しはにかむ獄寺に、嫌な予感。
背筋に汗が伝う。

「き、希望?」
(し…心中で希望とかって何?)

「恐縮っス!じゃあ…」

「なるべく空に近い超高層ビルの屋上から飛び降りるとかどうですかね!こう…10代目と俺のからだを赤い糸でグルグル巻きにしっかり結び付けて、」

「……」

「地面に落ちた時にはどっちがどっちの破片だか分かんねーくらいにぐしゃぐしゃに混ざり合っちまうとか……超理想的なんスけど!ねっ、ねっ、どう思いますか、10代目!」

(ロマンチストなのにスプラッタァアアア!!)
「…え…えへへ…」
傍目にも明らかなほどツナは全体的に、土気色になっている。
が、向かい側の獄寺は煙草をもみ消すと真剣な眼差しで、ツナの手を両手でしっかりと握った。

「そうすれば、きっと来世でも必ず俺と10代目は一緒っスよね?」

(ああ、)

ツナはこうして獄寺の希望を聞きながら、残される母親の奈々、山本、ハル達のことで頭がいっぱいの自分を恥じた。
獄寺はツナだけを真摯に見つめているのに、ツナはその半分の誠実さも持ち合わせていないのだ。

(なんだか申し訳ないや…)

孤独に過ごしてきたせいで、塞がれた彼の世界を(勘違いのせいもあるが)開いたツナに、獄寺は完全に心酔している。
不良とはいえ肝心なところで愛情深い獄寺を、自分の身勝手な思いつきに付き合わせようとすることの重大性に、今やっと気づいた。

「あの…獄寺くん、あのさ」
「はいっ?」

「俺…やっぱり…獄寺くんと心中するの、止めよう、かな…とか思うんだけど……」
「なっ何でなんスかぁあああ!」
「ひィ!?」

絶望の雄叫びをあげる獄寺に、ツナは震え上がった。

「だ、だ、だってさ、獄寺くんが俺と死ぬのは、勿体無いかなーと、」
「勿体無くないです!10代目と最期を共にするのはむしろ本望です!光栄なんです!!」
「はぅうっ…」

目の端に見知った黒がはためいているのにも気づかないほど、銀髪を振り乱す忠犬の剣幕は凄まじかった。
周りの人々の視線が痛い。

「まっまさか……俺じゃなくて、山本を連れてくおつもりなんじゃ…?!」
あまりの動揺に蒼白な獄寺の様子に、ツナの顔面もしろくなる。

「山本はないんだって〜、」
「ほんとっスね?信じちゃいますよ俺、山本はないんスよね?」
「山本に関してどんだけ疑り深いんだよ、本当だからさ」
ツナは立ち上がる獄寺を宥めた。

「落ち着こうよ、獄寺くん」
「はい…すいません、取り乱しました。じゃあ10代目、俺以外ならどいつを心中相手に選ぶっておっしゃるんスか…?」

「えあ、えーっと」


何となくこういう展開になるのではないかと危惧していたが…なった。

広い店内、明るい音楽の中、場違いに凝り固まる2人。
言葉に窮したツナと、縋るようにツナの返答を待つ獄寺の上に、影が落ちた。


「そんなの、僕に決まってるでしょ」


「ひゃっ!?」
穏やかな声にびくっと顔をあげると、そこには何食わぬ顔で雲雀が佇んでいた。
見回りの途中だろう、いつも通りの学ラン姿(といってもツナは彼の普段着などほとんど見たことはないが)で、風紀の腕章が輝いている。

「ひ、ひばりさん…」
「やあ、沢田綱吉。随分と面白そうな話をしているじゃないか」
「てめー何しに来やがった!」

どうどう、と獄寺を抑えてツナは愛想笑いを浮かべる。
「珍しいですね、ひばりさんがこんなトコへ来るの」

「うん、外からきみが見えたから。ねぇそんなことより、きみ…死にたいの?」
たずねる雲雀はどこか高揚した顔つきである。
ぺろん、と朱いくちびるを舐める猫みたいな仕草に思わずドキッとさせられる。

「どうして早く僕に相談してくれなかったんだい?喜んで殺してあげるのに、」

(根本的に勘違いしてるひと、来たーー!)

「いや、殺して欲しいんじゃなくて、心ぢゅ、」
「簡単さ。息しなくなるまで、きみをグチャグチャにしたらいいんでしょ」
「それ心中って言わねーだろーが」

(獄寺くんが突っ込みに回った!?)
雲雀に比べると、まだ獄寺のほうが常識人に近いのかもしれない。
しかし、雲雀は若干引き気味のツナと獄寺など意に介せず、ツナの腕を取った。

「さあ、おいで沢田綱吉。心中しよう心中、」
「そんなピクニック行くみたいに…」

「およびじゃねぇんだよ雲雀、お前なんて10代目のお口から名前すら全然出てきてねえんだっ!」
「黙っててくれるかい、獄寺隼人。僕の得物が沢田綱吉の血を啜りたいって鳴いてるんだ。邪魔するならきみから咬み殺すけどね」

(うわぁ…厄介なふたりが出会っちゃったよ)

この場合、結果的に自分と獄寺が雲雀に殺されてしまえば、心中と言えなくもないんだろうか?

しかし…

「うーん…なんかイメージと違うなぁ、ひばりさんが言ってんの、ただの猟奇殺人だもん」
「生意気言うね」

雲雀は渋るツナにいよいよ興味をそそられたのか、ツナの隣りに腰を下ろし、窓際へ追いやるように詰めてきた。

「なに着席してんだてめーは!」









次に続く。
雲雀さん、謎の子すぎる。




話はありきたりなんで、話の筋が読めても…苦笑いで見守ってください。
うふん!



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あきゅろす。
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