シスター&ブラザー!
その姉、豹変す。
「みんなー 練習お疲れ様!
はい、ドリンクとおにぎりよ」
「わぁ すげぇ美味そう。やっぱマネージャーが居るといいッスね」
「やだー、可愛い成神くんには、二番目に大きいおにぎりあげるわ!
次郎にはもちろん一番大きいやつよ、あーんして?」
「そんなでかいの入るかよ!!」
佐久間の姉が(無理矢理)マネージャーと言い張ってグランドに入り浸るようになってから、早三日。
練習後に差し入れがあったり、タオルが用意されていたり、なかなか選手達にはいい環境ができている。
まぁ、俺には相変わらず、敵対心剥き出しだが。
とりあえず、なんで俺のおにぎりだけ、海苔ではなく昆布で巻いたんだ……
シスター&ブラザー!
「気持ち悪い……」
「大丈夫か 鬼道」
「あ、ぁ…まさか昆布が梅味だと思わなくてな…」
「え、昆布?梅味?」
「なんでもない」
嫌がらせに対抗しようと、食べきってみたが、これはきつい。
まぁ、あいつの悔しそうな顔が見れたからやったかいはあったが……
「鬼道さん、ちょっといいですか」
「どうした デ…辺見。間違った、デコ」
「デコ言い直したんですか。そんなにデコじゃありませんよ!」
「じゃあハゲ。どうした」
「酷くなってる!!
総帥が、お呼びです。あと、マネージャーもつれてくるようにって」
さては、なにか仕出かしたな…。
昨日は、佐久間にジャッジスルーをした寺門に思いきり殴りかかって三週間の怪我まで負わせたし、現に俺も腹が痛くて練習できる状態じゃない…このままでは被害が増えるかもしれん(特に俺が)
「次郎ー!おにぎり食べててもかわいい〜超かわいい〜!ほらもっと食べて〜」
「も、食えな…い、うぐっ!!」
「美咲、ちょっと来い」
「なによ、鬼道……私と次郎のラブラブタイム邪魔するんじゃないわよ」
「口からシーチキン出して、死にかけてるのが、ラブラブタイムなのか?
とにかく 来い!総帥がよんでいる」
「……影山が?」
「あぁ、おまえも連れてくるようにと命令だ」
美咲は複雑そうな顔をして、俺のあとを二メートルあけてついてきた。
**********
「総帥、お待たせしました。
鬼道です」
「入れ」
「はい」
扉が開き、真っすぐに総帥のもとへ向かうと、横に居たはずの美咲が、物凄い勢いで総帥へと走っていく。
まさか、あいつ…総帥が嫌いで、殴る気なんじゃ…!!ありえる。ありえすぎる!!
「美咲!やめろ!」
「影山さまぁ〜会いたかったぁん」
「………え?」
なんであんなメロメロなんだ あいつ…
その猫みたいな声はなんだ。俺には番犬のような声しか出さないじゃないか
「美咲、離れるんだ…私は鬼道と話がある」
「えぇーそんなぁ!」
「すまない、いい子にしていてくれ」
「はぁーい」
美咲もキモいが、やけにニヤニヤしている総帥もかなりキモい。
なんだ、変な汗がとまらん。
「い、いったいどういうご関係で?」
「美咲との関係?それは秘密だ」
「………いや、その…」
「前に、実験を手伝ってもらっている最中に、勝手に試作品を飲んで私に懐いてしまったようだ。私には関係ない。だが、グジョッブだ」
「グジョッブ!?」
「忘れろ。それより本題は美咲がマネージャーに入ること、それだ」
総帥は膝の上でパタパタと足を泳がせている美咲を見ながら、はぁ…とため息をついた。
「正式なマネージャーとして、美咲を「嫌です」
「マネージャーにし「嫌です」
総帥の言葉を否定し、くるりと背をむけて出口へと向かおうとすると、マントが掴まれ、首がぐいっと後ろへ引っ張られる。
「うぐっ…」
「鬼道、総帥の命令きかなきゃ殺すよ」
「ぐぁああっ…死ぬ……!」
「はいと言えば楽になるの。言ってごらんなさい、「美咲さま、俺達のマネージャーになってください」と!早く言いなさい!」
「わ、わかったから…認め、る!!」
苦しながらにそう言うと、パッと手が話されて、ふらりと前によろけてしまう。
後ろでは総帥と美咲が「いえーい」とかいいながらハイタッチをして、俺を笑っていた。
勝ち誇った美咲の笑顔に、かなりドキりとしたが、これはきっと呼吸がうまくできないからだ。そうにちがいない。
その姉、豹変す。
(鬼道、絶対に総帥の前の私は次郎に言わないでよね)
(言いたくないし、あんな総帥を認めたくないから言わん!)
、
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