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二日酔い
ぐる ぐる ぐる ‥
回る天井に頭痛を覚えて起き上がれなかった。ユエが低く唸ると「お目覚めですか」と薬売りの声が聞こえる。

「‥わたしは」

「昨夜はアレだけ飲まれていましたから ね」

「ふつかよい、か」「えぇ」

食欲は?と尋ねられてユエは首を横に‥振ることが辛く、力なく持ち上げた手をブラブラと振った。薬売りはズズッと畳を擦って近寄りユエの額に手を当てる。

「ただの‥ふつかよいだ」

「熱は無さそうですね、粥ぐらいなら食べられるでしょう」

「‥いら‥ぬ、「そのあとに薬を出しますから」‥楽になれるか?」

それが業ですから ね、と薬売りは立ち上がる。たかが二日酔いされど二日酔いだとユエは回る天井を睨み付けて襖の開く音に慌てて目を閉じた。

「ユエ さん?」

「‥‥‥」

「やれ、やれ 寝てしまいましたか」

「(寝た、私は今ぐっすり寝ている)」

「仕方がないです、ね‥ユエさんが好きな梅干しを乗せていただきましたのに」

「(うめぼし‥うめぼし)」

「冷めたら勿体ない、俺がいただく「食べる」‥おや、起きていらして?」

狸寝入りに気付いていたくせに「残念です」と笑う薬売りを睨むように見つめるユエ、そんな彼女を起こしてやり、口元にレンゲを押し付ける。

「な!」

「溢して布団を汚したら迷惑ですから ね」

「そ、そんなことししし、しな」

ポタ、とユエの手の甲に熱い雫が落ちる。ワザとだ、と落ちた雫を見つめて再度、睨むように顔をあげる。

「‥くすりや、このやろう」

「汚い 言葉を」

ユエの手を掬ってペロリと雫を舐めた。ヒクッと肩を奮わすが薬売りはチロッと舌を出してユエを見上げる。妖艶な表情、ユエは身体にふつふつと熱が溜まるのを意識した。

「なんなら くちうつ「‥ま、まてまて、わかった、わかったから食べるから」‥チッ」

舌打ちが聞こえたが気にしない振りをした。またも押し付けられたレンゲをあーんと口に含んで咀嚼する(消化に良いようにとほとんど米粒も無かったが)と腹にほんのりと熱が集まる。梅干しも手伝ってなんとか食せば、湯と共に薬を渡される。

「なぁ、薬屋」「はい」

「これ、苦いよな」「‥‥」

「なんで無言なんだよ」

ニヤリと口角が上がった気がして背筋に嫌な汗が流れた。しかし薬売りは飲んでくださいと促す。

「苦いよな」「‥ええ」

「どのくらい苦い」「‥とびきり」

「‥やはり寝ていればなお「ユエ、俺が折角ユエを思って作った薬が 飲 め ぬ と?」‥飲みます」

涙目に、覚悟を決めたのかガッと流し込んで湯を飲み干す。この世の終わりのような絶望的な苦さにのたうち回りたかった、が、なんとか飲み込んで布団に横になる。

飲んでも呑まれるな!

「‥しぬ」「薬を飲んだのに 死なれてはこまります、よ」





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あきゅろす。
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