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晩秋の頃
綴る手先が寒さに震えた。
秋も深まり泊まる宿の食事も旬の食材がふんだんに使われている。札屋は青白い指先を合わせて擦った。大気は秋めいてまだ指先が凍るような時期ではないだろうに--血を抜きすぎたかと自嘲する。

「‥札は充分か」

寒さに負けて掛け布団を引っ張り肩に掛ける、湯を浴びに行ったまま戻らない薬売りは多分--遊郭に行ったのだろう。仕事か遊びか理由など知ったところで特になんとも思わなかった。(と思いながらも苛々する気持ちを抑えているのだが)

「‥‥ユエ、さん」

「おや、お早いお帰りで」

「起きていたのですか」

「なに、商売道具の手入れをしていただけだ」

女将に頼んで湯を貰い、先程まで暖めていた指先を隠すようにぬるま湯で筆を洗っていた。ほかにも絞った手拭いで道具を磨いていると--せわしなく動かしたせいかようやく指先に感覚が戻ってきた。手拭いを握るその手を取られて思わずヒクッと肩が震えた。

「‥ユエさん こんなに冷えて」

「冷えているのは薬屋のほうだろう?」

「俺は商いをしてきただけですから」

「遊郭に行って、商いのみ?‥いやぁ商人の鏡だよ薬屋は」

クックッと笑うユエに薬売りは怪訝そうな色を見せた。手入れと言うユエはさほど汚れていない手拭いで薬売りの置いていった天秤を拭いている、終われば敷かれた布団に潜ろうと立ち上がり--薬売りに湯をもらえと言った。

「湯 を?」

「臭うんだよ、まさかそんな臭いを纏ったまま‥一組しかない布団で寝るつもりか?」

「‥はい、はい」

立ち上がる薬売りは覗いた横顔が拗ねているような表情であって目を見張る、これは、アレだ、嫉妬というかヤキモチというか‥そういう類いのモノだろうか。

「ユエさんも ご一緒にいかがですか」

「済ませた」

「冷えきった身体で俺と寝る おつもりで?」

「‥酒でも飲めば暖まろう?私は良いからさっさと行け」

「いやです」

バッと顔をあげたのはユエだった。怒っているような声色にも驚いたのだが、見上げた薬売りの表情は本当に怒っているように見えた。

「俺はね ユエさん」

「な、んだ」

「遊郭に行こうが どこに行こうが 貴女が待っているから 必要最低限で抑えているのです」
「必要最低限でって‥なんとまあ自分勝手な」

「それでも、早く、と」

「だから、湯を共にしろと?」

「ああそういえば 礼にと頂いた酒が「なにをしている早くいくぞ」‥やはりそうなるのですか」

酒が、あるともないとも言っていないのにユエは嬉々として立ち上がる。

「(酒で釣るのが一番だなんて な)」

たかが酒ごときで男と湯を共にするとは‥と行く末を案じる薬売りだった。

月見酒


(ああ美しい月に美味い酒‥幸せだ)(よかったですねぇ)(あと、薬屋がいるから断然美味いのだろうなあ)(!)

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こうやって甘やかされていればいい^^


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あきゅろす。
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