(カタリナ) 恐れていたことが、今まさに現実になろうとしていた。 「‥いま、なんと申された」 「手を貸して欲しいの、ユエ」 雨続きだったが久しぶりに晴れた日、ロアーヌ王妃であるカタリナが訪ねてきた。なにやら世間話で済むような表情をしておらずユエは嫌な予感が脳裏を過った。 「‥争い、か」 「鎮圧してしまえばいいだけなの、あちらはロアーヌを甘く見ているから」 「王妃、ミカエル様、モニカ様とユリアン殿がいらっしゃるのに‥わたくしが行く必要はありますか?」 「ええ、ここ数年平和ボケしていたから人手不足なの。万が一、を考えて」 「‥王妃の命令とあれば」 「ユエ、‥友人の頼みでは聞いてくれないのかしら?」 「カタリナ」 「ユエ、王妃の命令でなければ駄目なの?」 「‥‥いえ、しかし、カタリナはもうロアーヌの」 「関係ない、ユエに王妃として命令したくないの」 お願い、ロアーヌでまた共に戦いましょうとカタリナは頭を下げた。ユエは暫し考えるような仕草をして「友の頼みなら」と笑った。 「ボルカノには私からも話をするわ、大丈夫、難しい相手ではないの‥でも油断はしないで」 「わかっている。して、出陣はいつ?」 「早くて半月後、なるべく早くロアーヌに来てほしいわ‥彼と一緒でも構わないから」 「‥どうだろう、ボルカノ殿は騒がしいところを好まないから」 この話をして是と言ってくれるかどうかすらわからなかった。不安に思いながらも親友の頼みを断ることも出来ない、王妃の命令であった方が断ることができたかもしれないとユエは思った。 「ボルカノも戦ってくれたら本当に楽なんですけどね」 「‥わたしは誘わぬからな」 戦いでしかいきられないと言うのは、騎士の証 どう足掻いても騎士としか生きられないとユエは苦笑した。 [*前へ][次へ#] |