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決戦前夜(ボルカノ)

「ボルカノど、の‥」

決戦前夜、就寝準備をしていれば部屋に呼ばれた。驚いたユエは軽装で部屋に入ればボルカノは「座れ」とソファを指差す。

「‥なにか、ありましたか?」

「いや、特別何がというわけではない」

「そうですか」「話を、」「?」

「話をしたいと思っていた」

「はなし、ですか?」

真剣な眼差しにユエは居心地悪そうに俯く、何か?と尋ねればボルカノは隣に腰を下ろす、暫く無言でいれば「俺は」と絞り出すように呟く。

「俺は、ユエが、気になってしかたがないんだ」

「気に‥なる?」

「騎士として認めている、しかしそれだけでは済まないようなのだ」

「‥ボルカノ、どの‥?」

「好いている、ユエを」

「‥なっ、にを」「笑うか?」

苦笑して髪を掻き上げる。ユエは口をパクパクとさせて耳まで真っ赤になった顔を両手で覆った。

「わ、たくしは‥その」

言ってしまえばいい、たった二文字一言なのだから、簡単なことなのに何故いま動けないのだろうか、顔を覆った手に熱い--炎のような手が触れて捕まれると顔から引き剥がされる。見上げれば、困ったように微笑む彼がいた。胸が痛くなる、甘い痛みに泣いてしまいそうになるのをグッと抑えた。

「‥ユエ」

「わ、わたくしは、ボルカノどの、あなたを‥す い て‥おり ま す‥初めて お会いした‥そ のと、きより、ずっとずっと‥お慕い申しておりました」

ハラハラと涙が伝う。とうとう泣き出してしまって、ひぅ、ひぅ、と息も切れ切れにボルカノを見上げた。困惑してしまったのは彼の方で、まさかこんな返事をくれるなんて思いもしなかったのだ。

「好きだ、ユエ」

「わたく‥しも、好きです」

泣いてしまった彼女を抱き締めて、頭を撫でてやる好きだと何度も言うがなかなか泣き止んでくれそうになかった。

二つの影がひとつに重なる。想いが通じただけで嬉しくてどうしたら良いか分からない、ボルカノが抱き締めるこの腕もどう応えたら良いのかすら分からなかった。

「ボルカノどの」「‥生きて、戻るぞ」

「‥‥はい!」

「続きは‥戻ったらにしよう」


唇の次は額に落ちた優しいキスに、ユエは初めて次の決戦で「生きたい」と思うのだ。

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あきゅろす。
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