井上織姫(BLEACH) 「‥こんばんは、お姫さま」 月夜の晩に現れたのはよく知った死神だった。 「ユエさんっ」 「シィ‥大きな声を出すんじゃないよ」 ゆらり、ゆらりと向かいに腰を下ろす死神に織姫は「どうしてここに?」と尋ねた。 「‥なに、皆が必死になって姫さまを救出しようとしているからね、安否の確認だよ」 「ユエさん、」 「私は誰の味方もしない、前にも言っただろう?」 「死神を、人間を憎んでいるんですか?」 「ふふ‥チカラを欲する愚かな死神も人間も私は大嫌いさ」 背筋が凍る程の微笑みに織姫は身震いをした。 「あぁ、前に聞いたね」 「はい?」 「私が何故、平子やひよ里たちと知り合いなのか‥黒崎の虚化を予知出来たのか、そして、破面-アランカル-達に恐れられているのか」 オンナは秘密は多い方がミステリアスで格好いいのだがなと笑う死神は織姫の前で顔の右側を手で覆う、すると狐を模した面が鈴の音を鳴らして現れる。霊圧を抑えてはいるようなのだが織姫は腰が抜けてへたりこんでしまった。 「大丈夫かい?」 「え、ええ」 「‥ああ、気付かれてしまったね、また来るよ」 闇に溶けるように消えた死神には影が無かった。ヒラリと落ちた黒い蝶を模した式神の紙を拾うと懐に大切そうにしまった。 「‥ユエさん」 憎しみに嘆く彼女を見たくない、いつか安息を得られるようにと織姫は月を見上げて目を閉じた。 彼女に安息を‥ [*前へ][次へ#] |