(ビビ)
お姫様を浚ってきて、差し出すだけで任務は終わるはずだった。なのに、それが運命の出会いだったなんて誰が思おうか。
「‥う、うう」
「(なんだろう、このちんまいの‥?)」
この日はさっさと任務を終わらせて、熱いシャワーを浴びたかった。最近の上司は何を考えているのか分からない、女王をたぶらかしてみたり逃げたお姫様を今さら浚って来いなどと言ってみたり。他人と組むのは嫌なのに、お姫様は今相方が連れている。私は何やら小さな塊に目を奪われていた、お姫様と一緒にいたトンガリ帽子の小さな子供に。
「‥クロマ、だ‥でもどうしてこんなところに?」
「ん、んん‥?」
「やあ、」「ひぃやあああ!」
「(おや‥?)」
「おねぇさん、だれ?」
「‥驚いた、人語を話すことができるのかい?」
「ん?え?‥うん?」
首を傾げて、帽子を直す。この仕草が可愛らしくて、つい、手を差し伸べてしまった。
「‥ボクは、ビビっていうよ」
「驚いた‥名前まで持っているなんて」
「おねぇさんは?」「ん?」
「おなまえ、おしえてくれる?」
「‥ユエというよ、おチビさん」
「おチビさん違うよ、ビビだよ」
「ビビちゃん、ね?」「うん!」
どうして、こんなところにいるのだろうかと思ったのだが、構っている暇はなさそうだった。見覚えのある金糸に苦笑を漏らしてビビと名乗ったクロマに「またね」と微笑みかける。
「‥ユエおねぇさん?」
「また、会えるよ、ビビちゃん」
はじめまして!
お姫様を拐うのには失敗したけれど、思わぬ収穫があったとユエは笑っていた。
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