かくまう
先生と追いかけっこしている彼を見かけた。またかと思ったけど、図書室の小窓から私をチラリと見て立ち止まり入ってきた。確か前回は鈴木くんにかくまってもらっていたよな。
「かくまってえ!」「‥こっち」
仕方なく、古書室に招き入れてやる。ここは滅多に人が入ってこないし鍵を預かっているのは私だし内側から鍵をかければ入ってこれない、だから鍵をかけてしまった。二人きりで息を潜めて‥ああねえこんな状況ってなんだな妖しい破廉恥。しかし相手が平介であっても破廉恥な気がしてならないよお姉さんは!電気もカーテンもしてないから真っ暗だ。密室だ。
「小華さ」「んー?」
「あっくんが小華を好きだって」
「知ってるよ、可愛いよね」
「(そっちの意味じゃないと思うんだけどな)」
「今度何かお土産持っていってあげなくちゃね、和菓子とか好きかな」
「俺は好き」「平介には聞いてません」
ひでぇと肩を落とした平介は足音に肩をすくませる。だいたい日頃の行いが悪いからいけないのになと思いながら先生ごめんねと内心で謝罪した。
「小華」「なぁに?」
「密室だよね」
「そうね、うっかり殺人が起きそうなぐらい」
物騒なこと言わないの、と平介は苦笑する。なんだよロマンチックとでもいいたいのかと睨めば、和菓子お願いねと頭を撫でて古書室の扉を開ける。
「(‥やべ、一瞬ときめいた)」
仕方ないなあ!
先生に見つかって説教を受けるであろう彼を思うと「作ってやるか、自信作を」と単純な私は背中を見送った。
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