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(海藤)
「小華先輩?」

「ん?あれ、もう昼休み?」

保健室とは縁のない人だと思っていた、でも先輩はベッドに寝ていた。カーテンが空いていて先生もいなかったから尋ねようとしたのだが、知ってる人でついカーテンから覗いてしまったのだ。

「‥貧血、でね、あはは」

「小華先輩、無理しないでください」

「無理なんてしてないよ、海藤くんは大袈裟ねぇ‥あ、もうお昼だよね?」

「‥昼休み、ですけど」

「回復したし、戻るかなぁ」

グッと伸びをして欠伸をひとつした先輩は気だるそうに立ち上がった。お弁当ないから購買に行くかと呟いていた。

「俺、買ってきましょうか?」

「大丈夫、大丈夫、ああ、今日はお昼一緒に食べようか?」

「えっ?」「あ、体調悪い?」

「い、いえ、ただ体育で怪我してしまって」

「じゃあ見てあげるよ、こちらへどうぞー」

促されて椅子に腰を下ろす、先輩は手慣れた様子で消毒液とガーゼを取り出した。

「あー‥見事な擦り傷だね、染みるかも」

「平気です」「ああ、そうだよね」

きっと、あの人とかあの少年とするような感覚だったのだろう。先輩は優しくポンポンと傷口を撫でた。

「よし、消毒だけでも大丈夫そうだね」

「‥‥ありがとうございます」

「いいよ、あ、私ねメロンパンがいいな」

「え?」「お昼、あの木の下で食べようか」

「いいんですか?」「ん?」

「先輩たちと、でなくて」

「今日は可愛い後輩と一緒がいいかなってさ、だから帰りにメロンパン‥お願いね?」

「はいっ」

ニッコリ笑った先輩は五百円玉を俺に渡す、嬉しくて傷の痛みすら忘れて早足で向かった。


距離が、縮む


先輩は言葉にしなくてもなんとなく分かってくれる、そんな不思議な人だと思います。


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