α波な睡眠王子
「平介、へいすけ、へーすけ?」
三度読んでも返事がないから‥きっと、寝てるんだ。こちとら早朝から昼までバイトだったというのに!(コンビニのな)
「‥小華、おねえちゃん」
「あら秋くんこんにちは、リビングにおひとりってことは平の字はおねんねなのね」
「‥へいの、じ?」
「(あらやだ小首傾げちゃってかわいい!)平介のことだよ、あの野郎、秋くんをおひとりさまにするたぁいい度胸だ」
「‥小華おねえちゃん、むつかしい」
「よし!取り敢えず、秋くん軍曹!小華二等兵は敵の拠点に突っ込みます!」
「‥あ、えっと‥“らじゃ、ごぶうんを”」
二人でビシッと(前に教えた)敬礼をした。(そんな秋くんは私の目にとても凛々しく映りました)そろりそろりと敵の拠点(平介の部屋)の扉を開ければ‥
「(‥マジで寝てる)」
覗き込んだ平介はスカスカと寝息を立てていて、家の手伝いをしてこなかったから今日はバニラの香りはしない。だからここまで近付いても起きないのかなと思いながら、床に腰を下ろして色素の薄い髪に触れた。
「(眠り姫みたい)」
きっと彼からはα波が出てるんだ、平介を見ているときに出てくる脱力感と、早朝出勤の疲れに目蓋が重くなっていく。駄目だ、下で秋くん軍曹が待っているのに‥敵の拠点を討ち捕虜(平介)を持ち帰る優秀な二等兵の帰りを待っているの‥‥に、
「(くそぅ‥これも敵の罠、か)」
***
「‥なんで寝てんのこの子達」
平介が夢から覚めると、ベッドに突っ伏す甘味屋の娘といとこがいた。娘--小華と秋には仲良く毛布が掛かっていて、時間は丁度オヤツ時。ベッドから離れて小華を起こさないように横抱きにすれば(本当に起きなくて平介は驚いていた)秋が小さく身動いだ。
「へーすけ?」「シィー」
ちょうど小華をベッドに寝かせ布団をかけたところで秋は起きてしまった。慌てて人差し指を唇に当て扉を指差すと、秋は口を両手で押さえて小華を見下ろすと扉の方に歩いた平介の傍までゆっくりと移動する。
「寝かせてあげよ」「うん」
パンケーキの甘い匂いに娘が起きるまで、あと45分
「どーしてあたし布団に寝てんの‥?」
「ああ、小華、おはよ」
「ちょ、あたしの秋くん軍曹が敵の手に落ちてるうぅ!」
「(またその設定やってたんだこの子達)」
「小華おねえちゃん、いっしょ、たべよ」
「秋くんんん!」
「ほらほら、ちゃんと小華の分もあるから」
「‥平介がベッドに運んだの?」
「起きないとは思わなかったけどな」
「‥‥ありがとう(ボソボソ)」
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甘味屋の娘なら平介も無条件に仲良くしてくれそうという妄想^^
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