04
ユエが向かった先は草野球、中学の時の知り合いと久々の対面をしてから誘われるようになったのだ。
「むーらたくー‥ん?」
「ああ、ユエ来てくれたんだ」
「だって折角のお誘いだし」
マネージャーのくせに少し離れたところからの観戦、二人は芝生に腰掛けて級友だった渋谷の活躍を眺めていた。
「ねぇユエ」
「なぁに?」
「変な夢、まだ見る?」
「今日はね‥会話が出来た」
「へぇ」
「‥まじょのたましい、しんおうさま、はやく帰りたい‥まじょさんは帰りたいって、でもまだ駄目なんだって」
「‥そっかあ」
村田はユエを横目に「覚醒は早い」と呟く。誰かが接触したのか、それとも魔女の意思なのかは分からないが、立ち上がって「しぶやーおせー」などと応援をしているユエは紛れもなく‥村田の知る“魔女”とは思えなかった。
「ユエ、」「うん?」
「大丈夫だからね、何があっても僕はユエの味方だよ」
「‥へんな村田くん」
「うん、もうその台詞は聞きあきたから」
わかってないんだよなぁと村田は溜め息をついた。すると鞄の中からピルル、と小さな音がなる。
「‥グリエさん?」
「(グリエ?‥ああ“彼”が呼んだのはグリエ・ヨザックなのか‥気紛れも大概にしてほしいね)」
ニコニコとしながら電話をするユエを横目に村田はため息をつく。
「ねぇ、」「なぁに?」
「電話の相手、彼氏?」
「ち、違うよっ!グリエさんはね‥‥えー、っと‥‥」
「あはは!アレだろ、育て親の友人?」
「あ!うん、そうなの!今ねおうちに来てて、左ほっぺの湿布の替えの場所を聞かれたの」
「ひだり!?」
「うへえ‥村田くんどうしたの?」
「ユエ、左頬に何かしたの?」
「あ、ちょっと事故でね力一杯にビンタしちゃってね、昨夜は必死に謝って許してもらえたのー」
「(なんてこった)」
あちらの世界でその意味を彼女は知らない、が‥きっとグリエも理解しているはずだ。ここは異世界で道理など聞かぬ、と。そうであってほしい、彼がその気であっても自分が説得しようと決めた。
「いや‥まあ、あの人ヘタレだから心配要らないかな」
「ヘタレ?」
「ああこっちの話‥ほら渋谷の出番だよ」
「おおう!しぶやー」
意味を知らないんだから無効だよ、グリエ
おせーぶっとばせーと応援している姿が可愛らしいと村田は頬を緩めていた。
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