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「貴女は彼の仲間ですか?」

低過ぎもせず高過ぎでもない艶のある男の声が深月の真後ろから響いた。

頭にはゴツゴツしたものが押しつけられている。横目に漆黒の銃身が写る。

「……っ」

手に握っていた銃を床に落とし、両手を挙げる。

「僕を、殺しに来たんですね?」

感情も何もない。
ただ静かに男は問うた。



「……」

身体中の毛穴が泡立つ。

やばい。

深月の本能が『この男は危険だ』と警鐘を鳴らしている。

誰かが助けにくる可能性は0だろう。暗殺者は誰でもいいわけではないが、後釜が見つからないということはない。

所詮、私たちは使い捨てなのだから。


「こちらを向いてください」

黙ったままの深月の頭に銃を当てたまま、男は命令した。

身体が恐怖から硬直している。もちろん逆らうことはできない。

息を小さく吐くと、少し力が抜けた。そして、大人しく男へと向き直る。

「死ぬ前に聞きたいことが」

途端に伏せがちだった男の目が見開かれる。
写真では眼帯をはめていたはずだが、今は何も妨げるものはない。

対して気にも止めてなかったのだが、今や深月の視線はその目に釘付けだった。


蒼と赤の左右色違いの両目。


血のように赤く、毒々しい色ー。



その両目も、言葉を止めて深月のことをまじまじと凝視している。

男の唇は震え、ありえないというように目は見開かれていた。

一瞬、全ての音が消えたように思えた。


「なぜ…」


電車が大きく揺れた。

深月ははっと我に帰ると、ぶれていた銃先をかいくぐり、自身の太腿からナイフを抜き取った。




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あきゅろす。
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