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着慣れた黒のボディースーツを身につけた深月は、所定の場所へと立った。
隣に同じ黒のボディースーツに身をつつみ、緑色の髪を立てた男がやってくる。その男の不快なな視線が身体に絡みつく。

「なぁ、これ終わったらどっか飲みに」

「興味ない」

男は虚を突かれたような顔をし、我に返ったように舌打ちをした。

「あっそー。ノリ悪ぃなあ。同じ任務をやろうっていう仲間だろぉ」

「馴れ合うつもりはない」

「ハイハイお高くとまりやがって」
神経を逆撫でする声色のあと、急にトーンをさげて吐き捨てた。

「人殺しのくせに」



『お二人とも準備はよろしいでしょうか』

コンピューターオペレーションの音声が入る。深月がうなずくと、気まずそうに男は口を閉ざした。

『では、お気をつけて』

なにかの駆動音が響きだした。

『3,2,1、ミッションスタート』



途端、閃光につつまれる。眩しすぎて目を開けていられない。
こればかりはなんどやってもなれないし、いい気持ちのするものではなかった。


『お気をつけて』ね…。深月にはやけに平和ぼけした言葉に聞こえた。

そんなのは隣にいるこの男だってわかっているのだ。注意を怠ったものは、この場所には二度と帰ってこれないのだから。



目を開けると、薄暗い電灯に照らされた列車の中だった。
自分を見下ろすと、ボディースーツは見慣れない服になっている。これはこの場所に一番適した格好。どういう仕組みかは知らない。そんなことより、すべきことをしなければならない。

少し身じろぎすると、太ももにつけた愛銃を確認できる。手に持ったもう一つを胸元に隠しながら、回りを見渡した。

窓の外は暗く、もしかしたら地下なのかもしれない。

「対象を探す。私はあっちを見てくるから、あなたはそっちを見て来て」

窓の外を眺めていた緑髪の男に言い放つ。

「『あなた』ねぇ〜」
「よろしく」
「畏まりましたお姫さま」

おどけるように言う男を無視する深月が面白くなかったのか、男は一気に真顔に戻ると前方の車両扉へ消えていった。深月は、男が前車両へ移ったのを確認してから、後方の車両へと進んでいった。

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