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美味しいものはお早めに
じゅわりと、竹串をさしたところから澄んだ肉汁が染み出す。表面にもきれいな焼き色がついていて、いい感じだ。ブロッコリーは茹で上がってるから、後は、ざく切りにしたトマトに調味料を加えて、なじむまで炒めるだけ。

うん、完璧。

思わず笑みがこぼれる。

でも、ここで焦がしてしまっては一巻の終わり。

深月が弱火にと調節していると、インターホンが鳴った。時計を見ると7時ぴったり。もうそんな時間かと、画面にその人の顔が映っていることを確認して、傍に設置してある受話器をとる。

『ただいま深月、僕です』

「骸、おかえりなさい。悪いけど、自分で入ってきてくれない?今、手が離せなくって」

「…わかりました」

少し眉を潜めながら了承する骸にごめんねと謝り、通話を終了させる。

骸も鍵は持ってはいるのだが、自分で家に上がることはない。どうしても深月に迎えてほしいらしいのだ。

フライパンを見るとトマトはいい具合である。味もちょうど良い。

「うん、よし」


「なにがいいんですか」

「あ、骸。おかえりー」

皿の上のハンバーグに炒めたトマトをかけていると、するりと背後から骸の腕がウエストに巻きついてきた。

身長の高い骸がそうすると、深月はすっぽりと骸の中に納まってしまう。

首筋に鼻をうずめるように抱きしめる骸から逃れようと、身をよじるが逃がしてはくれない。

「骸ー」

「くふふ、何でしょう」

「料理冷めちゃうよ」

「おやおや、それはいけない。せっかく深月が作ってくれたのですから」

少しだけ拘束を緩めてくれたので、ブロッコリーの水を切る。

「美味しそうですね」

「結構自信作だったりー」

うれしそうに、今日のメニューの説明をしてくれる深月。そんな姿を見ると、骸は改めて幸せというものを感じることができた。

「あ、深月」

「なに……っ?」

皿に夕食を盛り付け終わった深月が振りむいたころで、顎をつかみ、口付けを落とす。最初はやわらかく、小鳥のついばみのように。そしてわずかに開いた口唇の間から下を滑り込ませ、深月の舌を絡めとる。遠慮がちに絡められた舌を押しやり、包み込み、歯肉をなぞり上げる。

「…ふ…………っあ………」

「くふ、可愛い…」

深月の瞳が潤んできたのを見計らって、骸の手がカットソーの中に伸びる。

「ちょっと、やだっ…ぁん」

「ただいまのキスだけのつもりだったんですが」

下着のホックを外す右手。
左手は先ほどからウエストに回されたままで、解くことはできない。
それどころか、力の抜けた深月を左手が支えている状態である。

「どうしましょう。キスだけで済ませられそうにありません」

深月の耳に唇を触れさせながら囁く。

「君があまりにも可愛いからいけないんですよ?」

軽いリップ音のあとに、ぴちゃぴちゃという水音。

耳の中を犯されるという事態に、ぞくぞくと背中から何かが這い上がってくる。

「……あっ……ん…やっ…」

胸をやさしくなでる右手が逆にもどかしい。

「むくろぉ…っ…」

「おや、おねだりなんていつから覚えたんですか?」

「から、かわないでっ…はん…ぁ…っ」

「素直な君も大好きですけど」

骸は、スカートを履いていた深月の下着だけ抜き取った。














「せっかくの料理、冷めちゃいましたね」
「骸のせいでしょ!」
「の割には、随分と積極的だったような…」
「うるさいうるさい!変態はご飯を早く温めてきなさい!」
「怒った顔も可愛いです」
「〜っ、早く行け!!!!」



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