[携帯モード] [URL送信]
星降る

暗い寝室。

明かりを点けようとすると、床を這う光に釘つけられた。元をたどれば、窓に結びつき、カーテンの隙間からもれた月の光のようであった。

深月は明かりは点けないまま、操られたようにそっと窓へと忍び寄った。

カーテンを1人ぶん程開けると、窓からはひんやりと外気の冷たさが伝わってくる。

思ったとおり、明るい満月。

空には雲ひとつかかっておらず、部屋が暗いせいもあるのか、いつもよりも輝きを増している星たちが美しかった。

控えめな柔らかな光。ぶるりと身体を震わせる。
今夜もやはり冷えそうだ。



「深月、寝ないんですか」

いきなり耳元で骸の声がして、驚いた心臓が大きく跳ねた。そのまま抱きすくめられ、胸の前で両腕が交差される。背中から骸の熱がじわりと伝わってきた。右頬がやけに熱いのは気のせいではない。

「えと、冬は、星が綺麗だなぁと思って」

深月は、落ち着かせるようにほぅと息をつくと再び空を見上げた。

「…そうですね。とても綺麗で、可愛らしくて、夜になるとより一層輝きますからね」

どくんと、大きく心臓が収縮する。
艶のあるテノールは深月の鼓膜を震わせる。

「いっそずっと僕の手で捕まえておければいいのですが…。全く、誰にも見せたくないくらいですよね」

「…っ」

吐く息は白く、うっすらと窓を曇らせてしまう。

深月が手で水滴で曇る硝子を擦ると、上から大きな手が重なった。

「……星の話だよ」
「星の話ですよ」







[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!