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Novel
私戦記 (智子→陽菜)
「黒木さ〜ん、何読んでるの?」

「えっ…と…ジャ…ンプっへへ」

輝かんばかりのネモの笑顔。
その辺の男子なら一発で虜にしてしまえるんだろう。
だってやっぱり、可愛いし。

なんなんだこの気持ち…私ってもしかして
『異常性〈アブノーマル〉』?

…そんな疑問に駆られてから数日が経つ。
恋という程確かでもない、友情というほど爽やかでもない。
なんて呼べば良いのかわからない私の感情。
そんな思いを知って
何かが変わるかと思いきやいつも通りの日常が過ぎて行く。

ーーーーーーーーーーーーーー
百合イベントは回収できず時は放課後。
「今日も何も起こらなかった…か」
今のところ「ひなもこTrick」は訪れそうにない。

そんな事をぼんやりと考えつつ、
予兆もなくイベントは発生した。

「黒木さ〜ん!!」
「!?」
後方から走ってくるのはネモだった。
「ね…根元しゃん…!?」
薄々そうかな?とは思っていたんだ。
リップクリームの件もあるし。やっぱりネモは、私が好ー
「日誌!今日は私達日直だよ〜教室戻ろ!」
「えっ」
つまらない期待をしていた自分が恥ずかしくなり、
不意に目頭が熱くなった。

教室に着くと、ネモと机を向かい合わせた。
ネモは日誌を開くと可愛らしい字で空欄を埋めていく。
が、最後の『今日の出来事』で手を止めた。
「書くことないよね…なんかあるー?」
「な…ないよ…ね…」
今考えたら、放課後の教室に二人きりって…
かなりおいしい状況じゃないか?
「あ…あのさ…暇だし…さ…
ちょっと話したりしながら…考え…ない?」
「え…」
一秒ほどの沈黙。
やっちまた…と思った刹那、ネモは「いいね!」と返してくれた。

「じゃあ早速!ちょっと変な話していいー?」
ぐいぐいガンガン責めてきやがる。
私がうんとも言わないうちにネモはソレを切り出してきた。

「思ったんだけどね。私、友達の事大好きなんだ」

「でも恋愛感情は全くないの」
なんだこいつ?やっぱりくそビッチなの?
「あ…そんな感じ…かも…ね」
「えーどんな感じなの!?」

「友達と恋愛の好きって何が違うの!?」
いやいや知らねえよ…

「き…キスしたいかしたくないか…とか?」
私は友達としてでもゆうちゃんとならキス出来るけど…
てゆうかネモに何言ってんだ私
「なんかエロいー!
てゆうか黒木さんがそういうこと言うとか意外ー!」
「…っはは」
乾いた愛想笑いを喉奥から捻り出す。
なんだこれ…なんなんだ…
「そうだ、黒木さん、私は?」
「…ぇ」
「私と、キス出来る?」
冗談、なのか?冗談だよな、うん。
ここはネタで返すべきなのか?無理っていうのも失礼だよな…

「あ、う…うん…」
「…そっかぁ」

長らくの沈黙が続く。
それ見ろ、やっぱり引かれた。もういっそ消えてしまいたい…

「じゃあさ」

ガタッと席を立つとネモは大きな瞳に私を捉える。
「しよっか?」
夕方の教室、そんな言葉で2人の影が重なった。

「あはっ」
唇を離し、日誌の『今日の出来事』に
『ナイショ☆』と記すとネモはすたすたと歩いて行き…
「じゃ、友達と約束があるから!日誌出しとくね!」
と言い残して教室を後にした。

教室に静寂が訪れる。
ネモのいなくなった教室で、私はただ1人。
某然と立ち尽くしていた。
「…からかわれた?」
唇には生々しい感触がまだ残ってる。
『ネモが好き』
弄ばれる度に思い知るから。

「…ふざけんな」

ネモのそういうところが大嫌いなんだよ。


fin

管理人海月の処女作です。
いかがでしたか?ひなもこいいですよね!
続編に乞うご期待…(あるんでしょうか?)



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あきゅろす。
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