1827猫話連載(完結) かすかな不安6 『離しなよっ!ここから出せっ!ツナヨシが居るんだろ?!』 あんな小さな体でここまで僕を探しに来てくれたのか… 怖かっただろうに ディーノにきつく抱かれたまま、窓から外を眺めると、メイドが子猫ともう一匹を屋敷の外に連れ出す所だった。 『やっぱりツナヨシだ!』 ディーノから身を乗り出して窓から叫ぶ。 不意にディーノが窓を開けた。 するとその音に気づいたツナヨシが顔をこちらに向け、驚愕の表情を浮かべた。 「ヒバリ……さん……」 ディーノに抱かれたヒバリと、爽やかな笑顔で手を振る人間に、ツナヨシは言葉を失った。 目の前でバタンと閉まる窓。 ツナヨシの表情を見て、ハッとしてディーノを見ると、笑顔で手を振っている。 まさか……… まさか……… 『この………卑怯者っ!!』 バリッと音を立ててヒバリはディーノの顔を思い切り引っ掻いた。 白い頬から赤い雫が線を引いて伝い落ちる。 「ヒバリさんは………やっぱり……この屋敷の飼い猫になっちゃったんだ……」 連れ出された屋敷の外で、遠い窓を見上げて呟く。 「ツナヨシ…大丈夫か?」 ハヤトがそっと近づくと、ツナヨシはポタポタと涙を流しながらヒバリさん…と呟いて走り出した。 「オイッ!!!」 ハヤトは一度屋敷を振り返ると、窓を見上げて一睨みしツナヨシを追いかけた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |