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1827猫話連載(完結)
かすかな不安4



「よし、ここから入れるな。」

高い生け垣の綻びを見つけたハヤトは、スルリとしなやかに体を滑り込ませる。

中に入ると、飼い犬などがいないかまずは確認して、安全とわかると、ツナヨシに知らせるために小さく鳴いた。

次いでツナヨシが小さな体をスルッと滑らせ顔を出した。


「わあっ!凄い!ニンゲンの家なんて初めて入った」

あの路地裏が世界の総てだったツナヨシには、外の世界は広すぎて目眩がする。

広い庭には、噴水があり、色鮮やかな花が咲き乱れていていい香りがした。

「オイ、口開いてるぞ。」

パシンと叩かれて、意識を取り戻すと、再び視線を巡らせる。

白く高い壁にはいくつもの窓が並ぶ。

玄関の扉は固く閉ざされ、猫と言えども忍び込むのは難しそうだった……


「ヒバリさん……ここにいるの?いるなら返事して………逢いたいよ……」

か細い声でニャオと鳴いて、再び歩きながら探し始める。


「しっかし広い家だな。窓には届かねえし…もうちょい中が覗ければな…」

「ヒバリさんっヒバリさんっ!!」

小さく鳴いていたツナヨシが、声の限りに叫ぶ。

玄関に向かって大声で鳴いて、存在を探す。
痛々しい程懸命に叫ぶツナヨシにハヤトはそっと目を閉じた。


コイツの世界の中心はヒバリしかいないんだな…



「もしかしたら、ここじゃねぇのかもな…」

「そんな…」

二匹とも諦めかけたその時、ツナヨシが見上げた窓に黒猫の姿が見えた。

外を伺うようにじっと見ているような、その姿にツナヨシは再び叫んだ。




「ヒバリさんっっっ!」






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