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もどかしいのはお互い様 3

気分も乗り切らないままついに
夜会の時間が来てしまった。

部屋に雲雀を残したまま逃げ出した綱吉に、容赦なく時間は
やってきていた。


館のダンスホールを開け放して、思い思いに
着飾った婦人や紳士が集まり、あっという間に
会場は熱気に包まれる。
ゆったりと暮れて行く外の景色を時折眺めながら
綱吉は同盟相手や傘下のボスに忙しく挨拶をしていた。

「やあ、ツナヨシしばらく見ない間にまた美しくなったね。
どうだい今夜は一緒に踊らないか」
「ご冗談を、隣のお美しい婦人をさしおいては踊れませんよ」

このやり取りを何十回としただろうか、そろそろ社交辞令にも
飽きて来た頃、タイミングよく音楽がスタートし、一応身分を
隠した夜会が始まった。

「あー、疲れる。」

頼みの右腕もかなりモテる。
先ほどから仮面をしていてもわかりやすい銀髪が
あちらこちらと引っ張りだこで、自分で一人一人応対しなくては
いけない。


守護者たちは皆無下に出来ないご婦人方の相手をしていた。

喧噪をさけて壁に背を預け、綱吉はため息をついた。
高まる熱気に招かれた客たちは次々と相手を変えては
めまぐるしく踊る。
音楽は徐々に曲調を変え、綱吉の心をも焦らせるように
追い立てる。

そろそろ守護者の皆を助けにいこうか。
気持ちを切り替えて、心は誰かを思いながらホールに足を踏み出した。

綱吉も目元だけ隠した仮面をして、白いスーツに身を包み
少しだけオレンジの炎を瞳に灯らせて何とか自分を奮い立たせる。
身体は成長しても中身はあの頃の綱吉がまだいて、
こうして時々死ぬ気の炎の力を借りている。

「隼人、代わって。」

口元に笑みをたたえて、獄寺の手から婦人を譲り受けると
瞳の動きでありがとうと告げる。
そのまま腰を落とすと軽く会釈してから、音に合わせ踊りだす。

「今度は私がお相手を」

綱吉が微笑むと周りの空気も緩やかに温度を変えていく。
二人を見る目が明らかに色を変えるのがわかるようで、
獄寺も周りで相手をしている守護者たちもわずか
空気を張りつめさせる。
ボス自ら相手をするその様を見て我も我もと代わる代わる
人が群がるからだ。

何人目か相手が女性から男性に代わり、綱吉は内心またかと
独り言ちた。

「やはり今日の君は美しい。どうだろうこのままここを
一緒に出てはくれないだろうか。」

リードが代わり相手が主導権を握る。
腰を抱く手が妙にいやらしく、背中がざわざわした。

「申し訳ありませんが、私がこの場を去るわけにも行きません。
このままでしたら、まだお相手も出来ましょう。」

遠回しに断りを入れる綱吉に相手は心底残念そうに落胆した。

「君はすでに誰かのものなのか」
「お察しの通りに」

曲調が代わるタイミングで会釈をすると、綱吉はスルリとその手を
かわして次の相手に移っていった。



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