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もどかしいのはお互い様 2
ヒバリ→ツナ表現あり



空しさをそのまま吐き出したような倦怠感と共に
朝を迎えた。
いつもなら隣で健やかな寝息を立てて眠っているリボーンがいる。
その温もりもないまま、朝がやってくる。
自然と気持ちも落ち込んでいた。

今日の夜はいよいよ夜会で、ダンスの時間は嫌でも迫る。
ボンゴレのダンスパーティは仮面舞踏会で、同盟相手も無礼講。
お互いが仮面をつけて踊るので、男女身分その他諸々気にせず
踊れると好評で昔から続けられていた。

まさか自分の気持ち一つで今更取りやめにも出来ない。
皆意外に楽しみにしているのだ。
朝からそこかしこで浮き足だっているのがよくわかる。

「隼人、まだその服を着るにはちょっと早いかな」

優秀な右腕さえも、夜着る予定の服をもう用意している。

「十代目、少し合わせて見ておいた方がいいのではないですか?
多少サイズが…合わなくなっているかも知れませんよ」

にこにことうれしそうにしている右腕に、渋々と袖を通す。

「あれ?」

やはりと言わんばかりの獄寺が、少し困った顔で時計を見ながら
得意先のメーカーの番号を呟いた。

「十代目、今頃成長期ですか?」
「今頃?嘘だああ」
「昨夜確認しなかった俺のミスです。なんとか間に合わせますので…」

獄寺との会話の最中、部屋の扉がノックされた。
と、そこへ馴染みの服屋が顔を出し、その手には大きな衣装箱が
乗せられていた。

「え?リボーンが?」
「はい、先日当店にいらっしゃいまして、この衣装を注文されたのです」
「あいつ…」
「今日この時間に届けてくれとの事で、お伺い致しましたが
よろしかったでしょうか」
「さすが、リボーンさん…ですね」

少し悔しそうに獄寺が呟く。

綱吉の事に関しては獄寺だとて、よく見ていたつもりなのだ。
だからこそもしかしたらと、衣装合わせを考えついたのだ。

しかしリボーンが一枚上手だった。
より近くにいて綱吉の変化を見逃さなかった。

「良かったですね、十代目」
「あ、うん…」
「あまり嬉しそうではないですね」
「おれのがまた大きくなる…からかな」
「……十代目…」
「それにしてもすんごいピッタリだよー!気持ちわるっ」
「…」

あははと無理に笑っている綱吉の顔を静かに見つめる獄寺も
その目を伏せた。

それではと、色々忙しい獄寺が退出してから綱吉は届けられた
服を改めて見る。
細かくサイズを測ったような誂え具合に本当に驚いた。
シャツでさえ首回りもきつ過ぎず緩過ぎずのジャストサイズ。
腕の長さなんていつ測ったのかというほど、寸分の狂いもない。

毎晩ほとんど、と言っていいほどリボーンに抱きつかれて眠っている。
(まだ抱きしめて貰えるほどリボーンが大きくない)
時にはどんな発情具合なのか、いきなりキスを仕掛けられて
そのまま手でイかされるとかとんだ羞恥で。
とても12歳とは思えない巧みさで(まあ中身は大人だけど)、あっという間に組み伏せられる。
最近では本当にこのまま、最後までされてしまうんじゃないかと
思う時もあるけれど、どうやらリボーンが自分で納得できないらしくまだお互いにお預け状態で…まあはっきり言えばそろそろしたい。

ただ、やはり越えきれない壁が…あるわけで。
12歳、犯罪でしょうか。
それでもあの時折自分を見つめるリボーンの視線の熱さで
焼け死ぬんじゃないかと思う時もある。
その視線の意味をわかっているからこそ、どうにかなりたい気持ちも
膨らんで手に負えない。

リボーンのまだ俺より少し小さい手のひらでさえ、背徳的なほどに
感じてしまう。
あのリボーンから焦りなんて微塵も感じなかったあの頃より、
大きくなるに連れて中身と外身が成長に追いつかないアンバランスさ故か、手に取るように焦りを感じる。
あのリボーンが。

その時のあの目を思い出して、背中がゾクリと震えた。

昨夜自分でしたばかりの身体は、浅ましくもリボーンの熱を持った指の感触を思い出すだけで、あっさりと形を変える。
24にもなったいい大人が、こんなにも簡単に陥落するほどに
欲して仕方ない。

「はは、もう俺なんなの…」

自重気味に笑うことでしか、自分を戒められない。
いっそこんな欲なんてなくなればいいのに。

「リボーン…」

彼が選んでくれた服をぎゅっと抱きしめて、深く息を吸い込んだ。
匂いなんてするはずがないとわかっていても。

するとまたしても部屋のドアがノックされて、綱吉は現実へと引き戻された。

「は、はい」
「僕だけど」
「あ、ヒバリさん、開いてますよ」

返事をしてすぐに開けられた扉の向こう、ほんの一瞬躊躇する
雲雀の姿が見えた。
扉から綱吉を見た雲雀が、目を細めてため息をついた。
一歩室内に足を踏み入れて、つかつかと綱吉のそばまで近寄ると
じっと見つめてくる。

「ヒバリさん?」
「君のそのフェロモン何とかなんないの」
「え?」
「自覚ないの」
「ふぇろもん…て、ないですよ俺にはそんなの」

すでに枯れたおっさんみたいならわかるけど…

「禁欲を強いられてる聖女みたい」
「は!?聖女て、ありえないですからっ」
「はー、もういい加減にしてほしいよ。とりあえずキスくらいは
させて」
「ヒバリさんっ、ダメですってば…」

綱吉の肩を抱き寄せて、眉目秀麗な顔が近寄る。
涼やかな目元は、男から見ても十分に美男子と言えて見とれてしまう
ほどだけど。

「おれ、にはっリボーンしかいません…」
「わかってるよ。でもね、君がいくら選んだとは言えそんな
状態でいると不健康だよ。わかるでしょ」
「…おれ、大丈夫です…」
「君が大丈夫でも僕が大丈夫じゃない。赤ん坊は今いない、君が喋らなければ誰も知らない事にしておける」
「俺を誘惑しないでください…他にもきれいな人たくさんいるじゃないですかっ」
「僕は君がいい」
「俺はダメです…ごめんなさ…」

抱きしめられてる腕をそっとほどいてそこから抜け出すと、自室を出るために扉へと歩く。

「僕なら君にそんな顔させない。いますぐにでも綱吉を抱いてあげられるのに」
「ヒバリさん…でも俺は誰でも良いわけじゃないんです…」
「っ、綱吉…」
「ごめんなさいっ」

部屋に雲雀を残したまま、綱吉は部屋を後にした。



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あきゅろす。
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