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振動覚 (6927)



纏わりつくしっとりとした宵闇

瞳をあけたまま見る夢うつつの世界に短く嘆息する


「出て来いよ…居るのはわかってる。」

執務室の椅子に座ったまま、闇に向かって指先を伸ばすと、ユラリと揺れる視界、変わる景色、伸ばした指先は長く白い指に取られ恭しく口づけを受けた。


「お久しぶりです。ボンゴレ」

闇から出でた人物は、傅いたまま綱吉を見上げて作り物のような笑顔で微笑む

「……骸………」

「一目貴方に逢いたいと思い、夢を渡ってまいりました」

「また………夢か、」

「クフフ……お嫌ですか?」


ギシリと椅子が軋んだ音を立てて、骸のオッドアイが近づく


「またうたた寝して、風邪でもひいたらどうするんです。」


「お前には関係ない……」

「おや……」

つと、伸びた指が頬を滑り頤を持ち上げると、悪戯に覗きこむ。

そのまま、指先が首筋を伝いネクタイを器用に外すと、シャツの前を割開く。


「…………ッツ」

「また………こんな傷を負って……」

話しながらも白い包帯を巻かれた腹部にまで辿り、チラリと綱吉を見た。

「離せ…」

不躾に触れてくる指を払いのけ、痛みに顔をしかめる。

「この躯はいずれ僕のものになるんですから、勝手に傷を受けないでください」


「誰がお前なんかに」

「相変わらずつれないですね貴方は」

お前は いつだって この躯を自由にすることも出来たハズじゃないか……

十年前のあの日から、手に入れようと思えばいつだって………

現実には触れようともせず、ギリギリまで近づいては心ばかり奪っていく

こんなの 恋でも愛でもない

こんなに 求めても 届かないものは

苦しいだけなのは



「綱吉くん…傷が痛みますか?」

触れ合うほんの間際、輪郭さえも捕らえられなくなる距離、吐息さえも甘く交われるほど近く。


「……む……くろ」

「ダメです。あなたには、触れませんよ……」


耳元に囁かれ、陥落させられるほど熱く見つめられるのに。


その指は熱を持たず、躯もおそらくは冷たい

交わればたちまち腐り堕ちそうなほどの毒を胎内に宿していそうなその幻想に

アダムとイヴを惑わせたヘビの甘言かまたは……紅く熟れた林檎のそれと同じく


「触れもしないくせに……」

「堕ちたいのですか?」

ギシッと豪奢な椅子が軋む

「誰が…お前なんか…」

「クフフ、貴方はそうでなくては……簡単に甘い誘いに乗るようでは、実につまらない。」

さらりと茶色の髪を梳く


「そうですね、ただ一目…………貴方に逢いたかったのは本当です」


切な気に目を見つめられると、幻覚に惑わされるように深く、睦言を囁くような甘さで呟くと砂のように幻影が消えていく。

サラサラと音を立て崩れていく砂城の如く儚い逢瀬


消えた宙に伸ばした指先は何も掴めないまま



「むくろ………」























僕が水牢を出られた暁には……あるいは。

貴方が求めてくれるならその躯を僕にください


それまで


触れず、離さず


この幻覚に溺れきったその時に、その心も躯も手に入れるとしましょうか



貴方を捉えている

ボンゴレ十世なんてものから



この両腕に







fin






















あとがき

十年後ムクツナ★
桜井の思いつくムクツナは、切が多いかな……
骸の実態がハッキリしないせいかも知れない。

捏造未来

原作ではもう水牢出ちゃってますからね(笑)

触れないのにヤラシイ雰囲気に挑戦して失敗★
難しい!




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