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1827
その触れた手にさえ
 
 
 
「沢田ちょっとつき合いなよ」
 
それは見上げた空がすっかり秋めいた日の午後、並盛最強風紀委員長からの突然の誘いだった。
 
授業が始まる数分前、2−Aの教室の扉が突然開かれ、誰もが恐れる雲雀恭弥が現れ沢田綱吉を呼び出した。
すかさずそうはさせないとばかりに立ち上がった獄寺に一瞥をくれると
 
「邪魔するなら、沢田を咬み殺すよ」
 
と片眉をあげて言い放つ。
獄寺は逡巡したあと、チッと舌打ちすると無言でドカッと椅子に座り忌ま忌ましげに机に足をあげた。
 
そんな獄寺を見て、クスリと笑うと、しーんとなる教室から綱吉を連れ出してしまった。

 
 
 
「ヒバリさん」
笑いを含んだ声が背後からふわりと漂う。
 
「何」
 
「素直じゃないですね、相変わらず」
 
「生意気、草食動物のくせに」
 
「俺はヒバリさんが今連れ出してくれて嬉しいです」
 
クスクス笑いながらすぐ後ろをついて来る。
何故か背中が暖かい。
 
そのまま校舎を出てしまうと、止めてあったバイクの後ろを指す。
「あ、ヘルメット…ピッタリになってる…」
 
「草壁に直させた」
 
「あー…ハハッすみません…」
(草壁さんいつも大変だな…)
 
「乗って」
 
「はいっ」
 
後ろに乗り込むと、しっかりと雲雀の腰にしがみつく。
 
ブォンとバイクを発進させると風を切る音が耳横を通り過ぎる。

しばらく走ると見慣れない景色がゆっくりと流れてやがて止まった。
 
「着いたよ」
 
「ヒバリさんここ……」

並盛にこんな場所があったのか、と言うほど山深く小高い場所。見上げると一面紅葉した風景に綱吉はため息を零す。
 
「ここから見る景色は並盛で一番綺麗なんだ…」
 
赤く色づいたもみじを指先で愛おしむように触れる。
見上げる横顔が酷く綺麗で、触れている葉にさえ嫉妬してしまうほど。
 
「君に見せたかった。」
 
振り返って優しく笑うその顔に、ああ…また…胸がくるしくなる
 
「ああ、ここにも紅葉があったね」
 
すっと伸ばされた白い指先が頬に触れ、慈しむように撫でる。
 
「ヒバリさん…」
 
目を閉じてその指先にキスをひとつ。
 
「もう…ヒバリさんは俺を何回好きにさせたら気が済むんですか」

「さあ?」
 
男らしい低く甘い声が近づいて唇が重なる。
強く腰を引き寄せられて、さらに深く。
つま先をちょこっとあげて届く距離に焦がれた人がいる。
 
そのなんて幸せなこと
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あとがき
 
本当は表用の1827ハピバにしようと思ったのですが、時期も過ぎてしまったので普通に更新です。教室に乗り込んで来る雲雀さんとか…
獄、十代目が咬みころされたら大変だからね、自分対象なら喜んで受けてたつよね
 
紅葉の写真展に心奪われあの紅葉の赤さと雲雀さんの黒と白のコントラストがたまりません。
ため息がでます。

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