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メリークリスマス! 2009
メリークリスマス' 09



日付が変わる頃から降り出した雪が、街全体をうっすらと雪化粧していく。

淡くゆっくりと舞い落ちる様はまるでサンタクロースからの贈り物のようだった。


雪による寒さに、ベッドで寄り添って眠っていた二匹は目を醒ますと、お互いの体の異変に気づく。


「ツナヨシ……?」

「ヒバリさ…ん?」

暖かいベッドの上柔らかなフトンに包まれてお互いを見つめる。

そっと互いに伸ばした指先は猫のそれとは、まるで違って、すらりと伸びた指を二人ピタリと合わせた。


両手を重ね合わせて、じっと見つめ合い、やがて顔やら腕を触り始める。

猫の名残りなのか、頭にはフサフサの耳がついていて、尻尾もユラリ揺らすと感触があった。

どうやらお互いに半獣になったようだった。

「ツナヨシが人間になるとこんな感じなんだね…」

柔らかい頬を慣れない指先でそっと撫でる。

「ヒバリさん……凄くカッコイイです…思ったより年上じゃないんですね」

頬を撫でられて、擽ったそうに笑う。


「でも一体どうしてこんな事に…」

「……ツナヨシ笑わないで聞いてくれる?」

「ヒバリさん?」

「多分僕のせいだ……」

「え?」

昨日寝付いた後夢をみた。
真っ黒なスーツに身を包んだ赤ん坊が、夢の中で僕に言ったんだ、

一つだけ願いを叶えてやる。

そのかわり、僕が死んだらその時は魂を貰うと、口の端だけ上げて笑っていた。

魂の所は言わないで夢の内容をツナヨシに話して聞かせた。

「僕が……人間になった君を見てみたいと思ったんだ。」

そしてできる事なら……
望んでいた願いはもう一つ。


「ヒバリ………さん……」

温かいツナヨシの身体をヒバリはぎゅうっと抱きしめる。

「ツナヨシは人になっても可愛いね」

蜂蜜色の大きな瞳とフワフワな茶色い髪、肌はなめらかで白く柔らかく、思わずヒバリはツナヨシの額に唇を寄せる。

「ヒバリさんは凄くカッコよくて、俺、なんか心臓がドキドキして……体が壊れそうです…」

夜色の瞳にジッと見つめられ、華奢なのにしなやかな筋肉のついたヒバリの長い腕に抱き込まれていると、心臓はこれでもかと言うほど、早鐘を打つ。

ヒバリに抱きしめられている、それだけでたまらなく嬉しい。

「ヒバリさんが願ってくれた素敵なお願いに感謝しなきゃ……笑うなんてとんでもないです……俺、凄く嬉しい」

ヒバリを見上げてニッコリと微笑む。

「…っ……その笑顔は反則だよツナヨシ……」

抱きしめたままのツナヨシの肩口に頭をのせて呟く。

二人は抱きしめあったまま、柔らかな羽毛フトンに身を沈める。

クスクスと笑うツナヨシと、それを優しく見つめて額や頬、フサフサとした耳に口づけを落とすヒバリ。


神か悪魔かなんてどちらでも良かった。
この奇跡に感謝したい………


「寒いと思ったら雪が降ってたんですね……」

ヒバリに抱き込まれたまま、視線だけ窓に向けて外を見る。

冷気で曇った窓越しにみた真っ白な雪はぼんやりと光りを放ちながら、フワフワと舞い落ちていく。


「キレイ…………」


「そうだね…とてもキレイだ」

雪ではなく、ツナヨシを見ながら優しく微笑むヒバリに、胸がドキリと音をたてた。

「この魔法はいつまで持つんでしょうか…」

長い睫毛を伏せて、ヒバリの胸に擦り寄る。

猫のままでも不満なんてもちろんない。
でも人の形をとる今、お互いを抱きしめたりできる二本の腕がある。

そのことがこんなにも幸せだとは思わなかった。

「ツナヨシ………」

俯くツナヨシの髪を撫で、頬に手を添えて上向かせると柔らかく唇を重ねた。

そのまま何度も優しく啄むように口づけ、ツナヨシの目を見てそっと呟く。

「僕はこういう意味でツナヨシが好きだよ……ツナヨシは?僕が好き?」

藍を混ぜた瞳が夜の闇にボンヤリと滲んでふわりと溶けた。

「俺もヒバリさんが大好き!ずっとこうしたかった…だから、凄く嬉しい」

茶色の大きな瞳に張った水の膜は閉じられた瞬間ぽろぽろとこぼれ落ちる。

「よかった……」

羽毛の海にツナヨシを組伏せるともう一度好きだよと囁いて口づける。

「ヒバリさん……好き……」

ギュッと首に腕を巻きつけて、ヒバリの頬や髪にキスを返す。


「このクリスマスの贈り物に感謝します…」


抱きしめられているヒバリの体温に、次第にウトウトと眠くなってくる。

「ツナヨシ?」

「…は…い…」

「眠いの?」

ヒバリの優しい声さえも暖かい眠りに吸い込まれる。

「…ん……」

「明日、目が醒めたら、手繋いで散歩しよ…」

ふぁと欠伸をひとつ

「あと、こうして僕たちを住まわせてくれたディーノにも……お礼………」

言わなきゃ…

ツナヨシの温もりを抱きしめてヒバリも安らかな眠りについた。





初めてだよ



こんな穏やかな気持ちは



ありがとうツナヨシ


君という宝物が


僕の人生を暖かいものへ変えたんだ


君に



メリークリスマス………




fin
























あとがき


メリークリスマス!
最初に人間になる二人が浮かんで猫話を書き始めたのでした。

年内フリー小説となりますので貰ってあげるよ、というきとくな方はぜひどうぞ!
サイト等に掲載していただける場合は、当サイトの名前と管理人の名前は記載をお願いします★


裏も書いたのですが、せっかくなので表用がいいかな…と書き直しました(笑)裏は後日upしたいと思います……出来たら(笑)

それでは皆様が幸せなクリスマスを過ごせている事を願って……


フリー期間は終了しました★ありがとうございました!







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